グローバル・ビジネスリーダーを育てるために、企業が育成プログラムを設けることが多いが、その過程で躓くことも多い。いかに企業が課題を乗り越え、適した人材を育成できるのか考える。

いかに対象者を選定するか

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大滝 令嗣(おおたき・れいじ)
早稲田大学ビジネススクール教授。専門はグローバル経営、人材・組織。 東北大学工学部卒業、カリフォルニア大学電子工学科博士課程修了。東芝半導体技術研究所、ヘイコンサルティング・コンサルタント、マーサージャパン・シニアコンサルタント等を経て、1988年 マーサージャパン代表取締役社長、2000年より代表取締役会長兼アジア地域代表。 2005年にヘイコンサルティング・アジア地域代表、2008年にエーオンヒューイットジャパン代表取締役社長、2009年より同社の会長を務める。早稲田大学では2006年より教鞭をとり、2011年から現職。他にシンガポール経済開発庁ボードメンバー等を歴任。

前回の連載では、日本企業のグローバル・ビジネスリーダー(GBL)育成について具体的に2つの事例を取り上げ、プログラム内容を紹介した。それぞれの事例と同様のGBL育成プログラムがここ数年で海外進出をしている多くの大手日本企業でスタートしている。プログラムを始めていない企業の人事担当者と話していると、他社に「右に倣え」でとにかく何かを始めなければならないという焦りを感じている様子である。今回は、GBL育成を進める日本企業の課題と今後の方向性について紹介する。

第1回でも取り上げた当研究室が行った2012~13年の調査によると、プログラムの対象者を選ぶ際に、ジョブグレードを採用している企業は、現状でわずか14.3%だった。これは事業のグローバル化はしていても、人事制度に関しては日本本社の制度と海外現法の制度が一致しておらず、グローバルに統一された等級が整備されていないことが原因だと思われる。その結果、多くの企業ではプログラムへの参加者を選ぶ際、各現法にミドルマネジメントやシニアマネジメントといったように、おおよその対象ポジションを伝え、現法の責任者に候補者を推薦させた上で選定している。

 参加者の要件が明確にされていないため、実際のプログラムでは参加者間のレベルにばらつきがあり、プログラム進行上の問題になることがしばしばある。また、参加者の資格を検討せずにプログラムに送り始めてしまった結果、地域内での公平性で矛盾が生じ、プログラムを始めて3年目で送る人材が枯渇してしまったような地域のケースもある。このような実情もあり、調査では参加者の選定方法を見直さなければならないと感じている企業は全体の6割にも上った。