一方、アジアにおいて「最も称賛に価する企業」と評価された企業数では圧倒的多数を誇るアメリカ企業はというと、「優れたコーポレートブランディング」で評価されているのである。「競争力のある製品とサービス」に至っては理由の3位でしかない。

 これは何を意味するのであろうか。推測するに、友人に『グーグルからジョブオファーをもらったよ』と伝えた時の友人の反応が十中八九『Wow!』であるのに対し、『トヨタからオファーをもらったよ』と話した時の友人の反応は、おそらく『Wow!』ではないという違いなのではないだろうか。アジアの若者にとって、アメリカ企業に勤めることが「クール」なのに対して、日本企業に勤めることは「クール」ではないのかもしれない。

「働く場」のブランディングを考える

 今後、グローバル化の形態で述べた「グローバル企業」あるいは「トランスナショナル企業」を目指す日本企業が増えると推測されるが、それら日本企業が海外で取り組まなければならないもう一つの課題は企業のブランディングではないだろうか。これは、自社がいかにエキサイティングな職場で、どのようなことが学べて、どんな風に成長できるかということを、外に積極的に発信していくという意味で、エンプロイヤーブランディングと表現した方が分かりやすいかもしれない。

 これまで、製品のブランディングには積極的に取り組んできた日本企業の次のステップは、自社の働く場としての魅力を外にブランディングする必要がある。こういうと遠慮がちな日本人からは「いやいや、うちの会社には外に自慢できるようなものはありません」というコメントが返ってきそうだが、こんな時こそ、社外の人たちの意見に耳を傾け、彼らの指摘をもらおう。同じ会社に長年どっぷりと浸かってしまっている人には見えない会社の魅力を必ず見つけ出してくれるはずだ。

 以上のように日本企業は海外において、現地社員のキャリアディベロップメント・プログラムの整備とエンプロイヤーブランディングの2つを喫緊の課題として取り組んで行かなければならない。今取り組んでおかなければ、将来的に日本企業に待ち受けるのは、人材面で中国やインドなどの新興国出身のグローバル企業にも太刀打ちできない状況だと考える。