20年後に、日本企業に起こりうる4つのシナリオを提示したうえで、これから必要な「モノづくり力」以外の視点を提示する。好評連載の最終回。

 

20年後の日本企業に起こりうる4つのシナリオ

 連載最終回では、日本企業が将来どのようなシナリオをたどる可能性が高いのかを予測したうえで、日本企業に求められる“真のグローバル化”とは何かについて考えていく。

 図1は私の主宰する研究会で議論した日本企業の20年後のシナリオである。我々は20年後を占う際、最も重要な不確実性として①日本企業の“真のグローバル化”の進展度合いと②日本企業の“モノづくり力”と“コトづくり力”(提供する製品やサービスを使うことでユーザー自身が高付加価値を生み出していく仕掛けを作ること)の競争力の動向、という2つを選び、4つのシナリオを立てた。

●シナリオ1:世界を制する日本企業

 世界に名だたる“モノづくり力”と、海外マーケットのニーズやトレンドを熟知した上で行われる“コトづくり力”を武器に、多くのビジネス分野で日本企業が世界の競合他社を駆逐していくというシナリオである。20年後なので、ここでいう競争は従来の産業区分内に留まらない。

 たとえば自動車産業は、自動車というハードウェアに加え、自動運転やスマートグリッドなどの新サービスや新社会インフラとつながり、「モビリティー」という新しい分野に進化する。そして企業間の競争とは、この「モビリティー」でどれだけ早く世界標準となれるかの戦いとなるのだ。

 このシナリオでは日本企業連合が新しい分野でイノベーションを次々と生み出し、日本標準が世界マーケットを席巻する訳だが、これを実現させるためには、これまでにないレベルのリーダーシップ、コーディネーション能力、交渉能力が必要となる。こう考えてみると、日本企業が現在あまり得意としていない新システムの世界標準化のシナリオなので、実現可能性は低いと思われる。