一方で転職とキャリアについて面白い反応が図4に見られる。1社でキャリアゴールを目指すことができるのなら、それを選択するという人たちが44%もいるのだ。一生の内に5社以上には勤めるだろうと言っておきながら、1社で勤め上げるのも良いと言っている理由は何なのだろうか.

 私が考えるに、これはアジアの人材には腰をじっくり落ち着けて自分のキャリアゴールを目指したい反面、現在の雇用主の多くが短期視点なため、1社だけでキャリアパスを追求することは難しいと感じていると思う。したがって現実的には色々な会社で経験を積んで、自らのキャリアゴールを目指すのが現実的だという考えの表れなのではなかろうか。

 アジア人材は欧米の人材よりも明らかに高い安定志向がある。たとえば、就職先を選ぶ決定要因として雇用の安定性とワークライフバランスは、欧米人よりも必ず上位にくる項目である。欧米企業は業績が悪くなるとすぐにリストラをするが、日本企業は我慢強いというのは彼らの共通認識である。実際、永年雇用はアメリカ企業にはほとんど評価されない日本的慣行であるが、アジア人材には理解されやすい。

 以上の議論から優秀なアジア人材を採用し、活用していくためのポイントは3つである。

①グローバル企業としての自社のゴールイメージを明確にして伝えること

②グローバル化推進の中心となるグローバル人材のイメージと、その人材を中長期的に育成、活用していくためのグローバルタレントマネジメント計画を明確にして伝えること

③グローバル組織の中でアジア人材に与えられる可能性のあるキャリア機会とキャリアパス、処遇を明確にして伝えること

 自社が進めているグローバル化がどのようなもので、その中でアジア人材に期待していることは何であるという情報を積極的に開示していくことこそが、優秀なアジア人材の採用とリテンションに繋がり、ひいては日本企業のグローバル化への近道であると確信する。