まずは1つ目の側面、予測可能性について考えてみよう。
予測可能性とは、「“現時点で最良の予測システム”が“ランダムな実行”よりもどれほど精度が高いと期待できるか」である。
この図は、機械学習と人工知能(AI)の最先端技術で処理される課題の例を、予測可能性の順に沿って示したものだ。左端は「シグナル(予測の手掛かり)がない」状態。つまりコイン投げと同じで、予測がランダムに勝らない活動だ。それに対して右端は、純粋に決定的(予測可能)で機械的な課題を示している。
図の左から右へと見ていこう。長期投資については、過去の実績からも経済理論からも、人間の予測は当てにならず、ほとんどの場合ランダムと大差ないことが示されている。ただし、予測の期間が短くなるにしたがい(短期取引と高頻度取引)、わずかではあるが予測可能性は高まる。
さらに右、クレジットカードの不正検出と迷惑メールのフィルタリングでは、予測可能性のレベルが高まる。とはいえ今日のシステムでは、依然として相当な数の誤検出と検出漏れが生じている。
右端にあるのは、予測可能性の最も高い、高度に構造化された課題だ。その最たる例である無人自動車は、物理学への理解が確立された領域で作動する。他の車の動きや環境に起因するある程度の不確実性はあるものの、機械はたいてい人間よりもはるかに安全な運転方法を学習できる。
諸活動をこの側面に沿って並べることで、現在の自動化の困難と機会が見えてくる。話を予測可能性に限れば、「シグナルが豊富な活動はロボット化が可能であり、シグナルが少ない活動は人間の判断が必要」と推論できる。