仕事すべてが「プロジェクト化」する時代へ
ではなぜ、そのようなプロジェクトを成功に導くリーダー人材が十分に育っていないのだろうか。「岡田さん、僕は反省しているんですよ」と、その役員が私に語ってくれた。
「私が若い頃は、課長・部長はみんな夕方になったら飲みに行っていた。だから、違う部門との面倒な交渉も全部自分がやっていました。ところが自分が課長・部長の時代には、失敗できないプロジェクトばかりだったので他部門との交渉も全部自分がやってしまっていたんです。そして今、自分が役員になった時に、横断型プロジェクトを任せられるリーダーがいない。これは、そういう人材を育ててこなかった自分が悪いと思っているんですよ」。
このような話をいくつかの企業で耳にするようになった私は、2016年にプロジェクトリーダーのための「ファシリテーション型リーダーシップ講座」という研修講座を立ち上げた。そして、先の役員の方を始め、数社の役員方々にお願いして若手リーダーに受講して頂き、3カ月間かけてさまざまな議論を交わした。この連載は、その講座で交わされたエピソードを元に書いている。
私が講座を立ち上げたもう一つの理由。それは、日常業務のすべてがプロジェクト化していると感じていることにある。つまり、すべての人がプロジェクトリーダーとなる時代が来ると感じているからだ。
一昔前の「プロジェクト」といえば、「3社統合プロジェクト」「V字回復プロジェクト」など、全社的な大掛かりなものが多かった。しかし、プロジェクトとは本来「新しい価値の創造を、限られた期間で達成すること」であり、全社的なプロジェクトに関与していなかったとしても、日頃の業務の中でそのようなことを求められている読者は多いのではないだろうか。さらに、プロジェクトの範囲外とされている「決められたルーチン業務を効率よくこなす仕事」は、今後AIなどに任せるようになるだろう。すると、残された仕事は必然的に新価値創造に向き合うものとなり、結果的に私たちの日々の仕事すべてが「プロジェクト化」するとも言える。