プロジェクトマネジメントと
プロジェクトファシリテーションの違いとは

 最後に、プロジェクトマネジメントとプロジェクトファシリテーションの違いについて述べたい。これらの2つは対立するものではない。従来のプロジェクトマネジメントに加えて、多様なメンバー一人ひとりの本音を引き出して、クリエイティブになれる環境を作ることがプロジェクトファシリテーションの視点である。博報堂では営業が業務のスケジュールや予算等の管理をプロジェクトマネージャーとして行い、クリエイティブリーダーが議論の質を高めるファシリテーションの役割を担うことが多い。しかし、さまざまな企業のプロジェクトを見ていると、タスクやスケジュール管理などのプロジェクトマネジメントを行う「事務局」と呼ばれる人はいるが、議論をリードしてアイデアの質を高める人が不在であったり、はっきりとしていないケースが少なくない。

 優れたマネージャーが優れたファシリテーターであるとは限らない、とも言われている。マネジメントの語源は「野生の馬を飼いならす」だと言う。プロジェクトの最終型がある程度決まっているのであれば、メンバーを「飼いならす」マネジメント手法が適切かもしれない。しかし、誰も正解が分からないゴールに向かって、メンバーの潜在能力を引き出しながら議論進めるタイプのプロジェクトにおいては、ファシリテーションのスキルを持つ人材が必要である。変化が激しく未来が予測しにくい現状においては、ファシリテーション型リーダーシップが重要になってくると言えるだろう。

最終回につづく。