食品メーカーは、もう長らく市場競争で負けている商品カテゴリーを見極め、売れるうちに売却して撤退する必要があるだろう。顧客にとって魅力が低下した商品カテゴリーや、フードサービス業界が手ごろな値段で提供しているカテゴリーも見切ることだ。

 ほとんど「料理」とは呼べないような商品カテゴリー、たとえば箱からそのまま食べられる冷たいシリアルなどでさえ、売上げが下がっているのは、人々がダンキンドーナツ、スターバックス、タコベルなどで朝食を済ませるようになってきたためだ。これらの店では、朝食の売上げが総売上げの7%を占めている。調理済みの食事を買う人が増すにつれ、食品スーパーは棚スペースの配分を変える必要があり、メーカーはいくつかの商品カテゴリーから撤退すべきだろう。

 もう1つの生き残り策は、超高級化するか、地元市場に特化することで価格を思い切って上げることだ。缶詰ハムのブランドであるスパム(Spam)の場合、購入層は全米世帯の13%しかないにもかかわらず、売上げは伸び続けている。スパムを販売するホーメルでは、商品構成の大幅な再編(主に高級化)によって、ほとんどの大手食品株より高いパフォーマンスを示している。同社はほかにも、Wholly Guacamole(アボカドソース)、Skippy(ピーナツバター)、Muscle Milk(プロテイン)、Applegate Farms(加工肉)、Justin's(ナッツバターとスナック)といったブランドを買収してきた。

 最後の適応策は、技術革新を活用することだ。技術革新こそが、大手食品メーカーがここまで大きくなれた要因である(冷凍食品技術と缶詰技術は、この業界の大きなブレークスルーだった)。

 1つの有望なイノベーションは、ワシントン州立大学が開発したマイクロ波加熱殺菌(MATS: Microwave Assisted Thermal Sterilization)技術だ。FDA(米食品医薬品局)も認可済みのこの技術には、さまざまなメリットがある。第1に、最小限の熱・圧力・時間で食品を殺菌するため、舌触りや味の面で非常に高い質を保てる。第2に、品質がほとんど劣化しないため、ラベル表示も非常にすっきりし(つまりケミカルで怪しい成分がほとんど入らない)、高級食材とともに使う動機付けにもなる。第3に、食品を室温でパッケージ保存でき、何ヵ月も安全に食べられる。

 この第3のメリットは、消費者にはそれほど魅力的ではないかもしれないが、食品の消費期限に関する大きなブレークスルーであり、在庫管理や流通、さまざまなサプライチェーン上の利便性といった面での影響は計り知れない(MATS技術にはアマゾンも関心を示している。ホールフーズの買収よりもはるかに大きなインパクトを業界に与えるかもしれないからだ)。消費期限が延びれば食品ロスが減る。また、世界的な飢餓問題にも対処できるだろう。世界では現在も約10億人が食料不安に苦しんでいるのだ。

 私は、食品スーパーや食品メーカーに深い愛着を抱いている。しかし、この業界は、過去にしがみつくのをそろそろやめるべきだろう。家庭で食事を一からつくっていたのは、もう昔の話なのだ。

 食品業界のリーダーたちへの私からのアドバイスはシンプルだ。開拓者精神と伝道のDNAを再発見すること。新しい科学技術を受け入れること。ポートフォリオを整理し、現状に適応し、未来へのメッセージを発信すること。そして、世界を変えるのだ……かつて成し遂げたように。


HBR.ORG原文 The Grocery Industry Confronts a New Problem: Only 10% of Americans Love Cooking, September 22, 2017.

■こちらの記事もおすすめします
アマゾンのホールフーズ買収は、小売業の3ヵ年計画を紙切れに変えた
ホールフーズ:利益や株価は二の次である

 

エディ・ユーン(Eddie Yoon)
成長戦略のシンクタンクおよびコンサルティング会社、エディ・ウッド・グロウの創設者。The Cambridge Groupのディレクターも務める。2016年12月には、HBR Pressより著書Superconsumers(未訳)を刊行。ツイッター@eddiewouldgrowでも発信中。