3. 仕事と私生活の両方で前進できるよう後押しする

 キャリアの扉を開くことは、私生活での我慢を意味することが多い。特別なプロジェクトのために、パートナーとの夜のデートができなくなる。大きな昇進によって、子どもと週末の時間を過ごせなくなる。全国を飛び回る職務に異動となり、家族と離ればなれになる。

 フェイスブックの最も優れたマネジャーは、こうした代償を最小限に抑えるべく、私的な優先事項と折り合いがつくキャリア機会の構築に、部下と一緒に取り組んでいる。一例を示そう。

 エージェンシー関連業務を主導するショーナは、産休を経て、グローバルな地域を扱う役割へと戻ったが、そこでは時差が育児に大きな支障をもたらすことになる。そこでショーナは、上司とともに、出張の優先順位付けを考案。重要だが必須ではない事項については、地域担当の同僚と協力してビデオ会議で済ませることにした。上司はまた、働き方を変えていくショーナに助言をくれる、グローバル職のメンターを紹介した。

 ショーナは言う。「このような手厚いサポートのおかげで、仕事に完全に復帰しながら娘とも一緒に過ごせる、という自信を得ることができました」。こうしたサポートを提供するマネジャーの下では、部下は成果を上げるだけでなく、職場に長く留まる。自分の職場に誇りを持つのだ。

 離職はなくならないが、仕事を「辞めるのがもったいない」ようにできるかどうかはマネジャー次第である。優れた上司はみずからが「盾」となり、従業員を悪しき物事から守る。そして、有意義な仕事や学習機会への扉を開く。活力が湧くプロジェクトに従事でき、能力を最大限に発揮でき、私生活を犠牲にせず仕事で前進できるよう、部下を後押しするのだ。

 部下の幸福と成功、キャリアと人生を上司が大事に思っているならば、部下の仕事は恵まれたものとなり、他の職場で働くなど考えにくくなるはずだ。


HBR.ORG原文:Why People Really Quit Their Jobs, January 11, 2018.

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ロリー・ゴーラー(Lori Goler)
フェイスブックの人事部門ヘッド。

 

 

ジャネル・ゲイル(Janelle Gale)
フェイスブックの人事ビジネスパートナーズ部門ヘッド。

 

 

ブリン・ハリントン(Brynn Harrington)
フェイスブックの人材育成チームのリーダー。

 

 

アダム・グラント(Adam Grant)
ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授。著書に、『ORIGINALS』『GIVE & TAKE』がある。