外国暮らしは自己意識の明瞭化に関連している
「外国暮らしは自己概念の明瞭さを向上させる」という仮説を検証すべく、我々は計1874人が参加する6つの研究を実施した。最初の研究では、296人をオンラインで選んだ。その半数は3ヵ月以上外国で暮らした経験があり、残り半数は外国暮らしの経験がなかった。
自己概念の明瞭さの測定基準として定評のある質問票の全項目に、参加者全員が回答した。各項目は「概して、自分が誰であり、何者であるかが、はっきりわかっている」「自分のパーソナリティのさまざまな側面がせめぎ合っていると感じたことは、ほとんどない」といった質問に同意するレベルを尋ねるものだった(囲み記事参照)。
参加者は以下の記述に同意する・しないの程度を(1=「非常にそう思う」から5=「まったくそう思わない」の5段階評価で)表した。
1. 自分自身についての信念が相反することがよくある。
2. 自分自身についての評価が日によって変わることがある。
3. 自分が本当はどんなタイプの人間なのかと考え込むことに多くの時間をかける。
4. 見かけの自分は本当の自分ではないと感じることが時々ある。
5. 過去に自分がどんなタイプの人間だったかを考えたとき、本当の自分はどうだったかがわからなくなる。
6. 自分のパーソナリティのさまざまな側面がせめぎ合っていると感じたことは、ほとんどない*。
7. 自分自身を知る以上に、他者のことを知っていると思うことが時々ある。
8. 自分自身についての信念がころころ変わるように思う。
9. 自分のパーソナリティについて説明するように頼まれれば、その説明は結局、日によって違うことになるかもしれない。
10. たとえそうしたいと思っても、本当の自分がどのようであるかを人に話すことはないと思う。
11. 概して、自分が誰であり、何者であるかが、はっきりわかっている*。
12 .自分が欲していることを実際にわかっているわけではないので、物事について決心しにくいことがよくある。
注:スコアが高いほど、自己概念がより明瞭であることを示す。スコアは、1の「非常にそう思う」が最も低く、5の「まったくそう思わない」が最も高く設定されている(ただし、「*」が付いているものは、その逆)。
出所:Campbell, J.D., Trapnell, P.D., Heine, S.J., Katz, I.M., Lavellee, L.F. and Lehman, D.R., 1996. Self-concept clarity: Measurement, personality correlates, and cultural boundaries. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), p.141-156.
その結果、外国暮らしの経験を持つ参加者は、経験のない参加者よりも、より明瞭な自己意識を持っていることが判明した。
もちろん、この結果の説明として、「外国暮らしを選択する人は、外国暮らしの予定がまったくない人と比較して、より明瞭な自己意識をもともと持っている」ということもできる。
その可能性を排除する材料を得るために、2番目の研究を実施した。具体的には、外国暮らしの経験がある136人と、外国勤務または留学のチャンスを求めて外国暮らしに申し込んだが、まだ実行していない125人を比較した。この研究では年齢、性別、配偶者の有無、社会経済的地位、性格特性など、人口統計学上および心理学上の基準をコントロールした。
その結果はやはり、外国暮らしの経験がある参加者のほうが、外国暮らしは未経験だが今後1年以内に予定している参加者と比較して、より明瞭な自己意識を持っていることが判明した。