榮永 データの覇者になると、例えば体調データとか趣味嗜好のデータとか、そういうものまで全てわかるようになるでしょう。金融では今、金融機関と外部の事業者との間の安全なデータ連携を可能にするオープンAPIが広がっていますが、同じように決済データとそれ以外のデータをつなげることで、お客様に様々な提言・提案をすることが可能だと思います。

 ここで重要なのが営業と提言の違いです。ただ単に広告的な営業をすると、結局スパムメールになりかねない。ちゃんとした根拠に基づいた提言にしないといけないのですが、ここが課題の1つになるでしょう。

長谷部 また、セグメンテーションでもできることはまだまだあると思います。例えば、レストランの評価サイトはいろいろな人が見ますが、例えばゴールドカードを持っている人が高い評価をしている店はどこなのか、自分と同じような収入、属性、ライフスタイルの人が休日遊びに行くのはどこかといったこと。セグメントをある程度特定すれば自分と似た人の情報を探せるので便利だと思います。

 今の世の中の評価サイトは全員が評価するようになっていますが、カード会社は基本的な属性情報は持っているので、そういうセグメンテーションはすぐにできるのではないでしょうか。

――最後に、決済サービスについて今後、どんな点に注目していくべきかについて教えてください。

榮永 決済は有効利用できるデータの宝庫。本当に価値ある使い方を誰が最初に見つけるのか、そのプラットフォームを誰がつくり出すかによってマーケットが大きく動き出すでしょう。

長谷部 中国では、広く普及したスマホを通じて、電子決済が瞬く間に拡がりました。インドは成功か失敗かについては未だ議論がありますが、政府が強力にキャッシュレス化を進めています。韓国も、徴税策の一環として電子決済を位置付け、キャッシュレス化が進みました。

 国によって決済市場の進化過程は異なりますが、日本でも誰にとっても現金よりも利便性が高く、合理的と思えるような決済サービスが登場し、爆発的にキャッシュレス化が進む可能性はゼロではないと思います。今後数年で、業界地図が大きく変わる可能性もあるのではないでしょうか。それに乗り遅れないためには、常に複数のシナリオをもって、様々な競争環境を想定して、ディスラプター(業界の破壊者)の侵攻への備えをしておくことが重要です。

(取材・文/河合起季 撮影/西出裕一)