エッジ組織では
エンゲージメントをより高める人事制度を
――このような人材を獲得していくには、人事制度も変えていく必要があると思いますが、制度の改革という意味では、具体的にどのような工夫がありますか。
大崎 エッジ組織を成功に導くには、エッジ組織にいる人たちのエンゲージメント(従業員が戦略・目標を理解・共感し、自発的に自身の能力を発揮したいという意欲の度合い)の向上を図ることが大切です。どんな組織においてもエンゲージメントは重要ですが、特にエッジ組織は新しい顧客体験を創造するという性質上、一人ひとりのWillが特に重要になるからです。
そのためには、エッジ組織の人材のエンゲージメント向上に資する人事制度を速やかに導入すべきです。プロジェクト型やアジャイル型で日々の状況変化を取り込みながら早いサイクルで仕事が進んでいくエッジ組織において、コア組織で用いている人事制度をそのまま当てはめることは難しいでしょう。全般的な見直しが必要ですが、報酬であれ、育成であれ、見直しに向けてはその前提となる、会社としてその人材のパフォーマンスや力量をいかに評価するかが重要であり、特に評価制度(能力基準、評価基準、評価サイクル)を優先的に整える必要があります。
植野 評価という意味では、専門性に立脚した成果が出せているかどうかを見極める体制や仕組みも必要ですね。その人材が持つ専門性やスキルを最大限に生かした成果が出せているのかという点について、専門性の乏しい上司がフリーハンドで評価するのは限りなく困難です。ですから、時には外部知見者の力も借りながら、専門性の観点から成果の価値をきちんと判断できる評価者をアサインする、あるいはそれが難しい場合には評価基準を徹底的に明文化・形式知化するといった対応が求められます。
大崎 アクセンチュアでは、過去のデジタル変革の経験から、「デジタル・コンピテンシー」という、デジタル変革に必要な職種と、職種毎の職務内容やコンピテンシーをまとめたものを持っています。これまでの支援事例でも、製造業や金融機関などで、このデジタル・コンピテンシーをベースに、実際の各企業のデジタル変革のステージや業務の進め方、組織機能配置などを踏まえてカスタマイズする形で、専門性の観点からの評価や採用時見極めに活用する基準書を策定しています。(図表4)
