ロケットが安くなり、小惑星や月での
資源採掘ビジネスが始まる

――その3つの産業は今、どのような状況にありますか。まず宇宙産業ですが、技術が発展したとはいえ事業が成立するとは考えにくいのですが。

山村 たしかに、これまで宇宙産業は国家規模の予算と長期計画が不可欠で、銀行の与信と融資の仕組みを当てはめたり投資したりすることはできませんでした。しかし、現在の宇宙産業はダウンサイジングがかなり進んでいます。

 例えば、米国の民間企業スペースX社のFalconロケットが注目されているのは、打ち上げ価格がこれまでのロケットに比べて圧倒的に安いからです(図2)。高価・複雑・大型のエンジンではなく、安価・単純・小型のエンジンを複数利用することで、打ち上げの信頼性とエンジンの開発ROI(投資収益率)を向上させました。また、燃料以外でコストの大半を占めるエンジンを再利用することで機材の費用を抑え、エンジン製造LT(リードタイム)を考慮せずに連続打ち上げを可能にしています。

 一方で、我々は20万円程度の費用でヨーロッパ(東京―ロンドン間1万km)に移動することができますが、これを担うエアバスの大型機「A380」の価格は450億円です。なぜこのような低レートでの価格提供が実現可能なのかというと、飛行機が再利用されているからです。

 真空の宇宙空間(高度1万km)まで移動する際に利用するロケットは数十~数百億円かかります。Falconロケットは再利用の成功によって、1回あたりの打ち上げコストの飛躍的なダウンサイジングを実現しました。

出典:アクセンチュア