
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
デジタルストラテジー/フューチャリスト
シニア・プリンシパル
東京工業大学大学院技術経営専攻修了(MOT)。2011年アクセンチュア入社。学生時代に天才技術者育成の国家プロジェクト「未踏」事業に採択された他、自身が保有する知的財産やプロダクトを大企業と組んで事業化するなど、オープンイノベーションや技術系ベンチャーの領域で活動を続け、経済産業省から「Innovative Technologies」を受賞。アクセンチュアではデジタル戦略や先端テクノロジーの専門家としてマルチインダストリー協業や、スタートアップ協業などを支援。
久池井 中でも最も期待が持てる宇宙ビジネスは、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が世界をリードする「スペースマイニング」の分野です。レアメタルとレアアースの宝庫である小惑星で資源採掘し、地球に持ち帰って販売するというビジネスです。ご存知のように、「はやぶさ」は2010年に世界で初めて小惑星の表面物質を採取することに成功しました。
以前は100年かかると言われた宇宙ビジネスですが、前述したようにスペースX社がロケットの価格を大幅に下げるというイノベーションを起こしたことによって、恒久月面基地や有人火星探査など、まさにSFの世界が実現しようとしています。宇宙旅行も宇宙採掘も20年以内に始まるはずです。
銀行は、地球上の鉱脈を探す事業への投資は経験済みで、リスク計算もできるので、小惑星や月面を舞台とした宇宙鉱脈開発の債券取引やプロジェクトファイナンスなどが成立すると思われます。例えば火星と木星の間にある小惑星帯には、数兆円以上の鉱物資源を持った直径100メートル程度の小惑星が存在すると言われています。仮に100億~200億円を10回投資しても、1回成功すれば数兆円になるわけですから、リスクに比べて圧倒的にリターンが大きいビジネスになりますね。
17世紀初めの「大航海時代」には、商船プロジェクトごとに多くの出資者から資金を集めて投資し、希少価値が高かった香辛料を持ち帰ることに成功したら、出資した金額に応じて出資者に利益を分配していました。小惑星の資源採掘ビジネスは、大航海時代の商船と同様に、小惑星資源開発に対して複数の出資者から資金を集め、持ち帰った資源で得た収益を分配するような投資スキームと、これらのポートフォリオ管理になると考えられます。
また、将来的にはロケットのリユースが可能になれば、飛行機と同様に人工衛星や宇宙関連の機材にたいするオペレーションリースなども活発に行われるようになるでしょう(図3)。
