人材開発部門にも
「自分事化」が求められている

 これまでの連載を通じて、様々な検討と考察を行ってきた。まとめると以下の通りとなる。

●「異質」かつ「成果が厳しく求められる」環境そのものではなく、そこでの「自分事化」のプロセスを通じてリーダーシップが成長する。
●そのような環境で「自分事化」のプロセスを経験し、その後も所属企業で「自分事化」を起こし続けて成長し続ける人材こそが、社会と組織の未来を切り拓くリーダーになりえる。
●留職プログラム後、所属元企業で「自分事化」を起こすためには、プログラム中の環境とは異なる障壁や葛藤と向き合わねばならない。これらは一朝一夕で乗り越えられるものではなく、その間の精神的な下支えが重要となる。

 これらに加えて、一点、人材開発部門に対して重要な提言をしたい。

 それは、所属元企業で「自分事化」を起こして組織変革につなげる人材を育成したいのであれば、人材開発部門も、人材育成に対して「自分事化」する必要があるということだ。

 時には部門の所掌権限の範囲を超えて、関係部署との議論・折衝を行わなければならない局面も出てくるだろう。その際に感じる不安・恐怖は、恐らくまさに留職者が所属元企業で「自分事化」を起こそうとするときにぶち当たる葛藤そのものだ。

 葛藤の痛みや苦しさを実体験として知り、それを乗り越えて行動に踏み切ろうとする人材開発部門の方々と力を合わせながら、私たちクロスフィールズも、更なるプログラムの磨き上げを行うとともに、プログラム後のフォローの仕方についても、より構造的な検討を重ねていきたい。

新しいリーダーシップ開発論
[連載第1回]「留職プログラム」が切り拓くリーダーシップ
[連載第2回]「異質」かつ「成果が厳しく求められる」環境で育む強烈な原体験
[連載第3回]マインドセットの大転換「自分事化」
[連載第4回]「留職プログラム」の成否を握るキーファクターは何か
[連載第5回]「ペルソナ」ごとのリーダーシップ成長のトリガー
[連載第6回]明暗が分かれる帰国後の留職者

 

中山 慎太郎
NPO法人 クロスフィールズ 副代表。2006年一橋大学法学部卒業。国際協力銀行、国際協力機構、三菱商事株式会社にて特に中南米のインフラ開発に従事後、2014年にクロスフィールズ参画。留職プログラムのプロジェクトマネージャ―、留職事業の事業統括を経て、経営管理部門と法人営業部門の事業統括を務める。2018年6月に副代表に就任。

小沼 大地
NPO法人 クロスフィールズ 共同創業者・代表理事。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、NPO法人クロスフィールズを創業。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shaperに選出、2016年に『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』の「未来をつくるU-40経営者20人」に選出される。国際協力NGOセンター(JANIC)の理事、新公益連盟の理事も務める。著書に『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)。


NPO法人クロスフィールズ
2011年5月創業。「すべての人が「働くこと」を通じて、想い・情熱を実現することのできる世界」「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」の実現をビジョンに掲げ、留職プログラムを旗艦事業として、国内外の社会課題の現場と企業の間に、枠を超えた橋を架ける様々なプログラムを展開、そこで生まれる挑戦への伴走を続けている。