シェアオフィス大手のWeWork(ウィーワーク)が上場を計画しており、その評価額の高さも相まって、同社の動向が注目を浴びている。ウィーワークはみずからを成長性の高いIT企業だと位置づけているが、ビジャイ・ゴビンダラジャン氏らは、その主張に正面から反論する。IT企業の5つの特徴とは何か、ウィーワークがそれらの条件を満たしていないことはなぜ問題なのか。
2019年8月14日、米国シェアオフィス大手WeWork(ウィーワーク)の運営会社ザ・ウィー・カンパニーは、米証券取引委員会に提出した新規株式公開(IPO)の目論見書を提出した。
これをきっかけに、同社の莫大な企業評価額(2019年前半の時点では470億ドルだった)に対する懸念が噴出した。多額の損失(売上高18億ドルに対して16億ドル)を計上していたので当然ともいえるが、急速な成長(毎年86%の売上高の伸び)を遂げているにもかかわらず、疑念の声は収まらない。
また、ウィーワークはみずからが主張する通りIT企業なのか(「テクノロジー」という言葉は、同社の目論見書の中に110回も登場する)、さらにはIT企業並みの巨額な企業価値評価に値するのかも、改めて疑問視されている。
専門家はずいぶん前から、ウィーワークはIT企業ではなく、現代的な不動産会社であると主張してきた。同社は家主から長期リース契約で物件を確保し、それを短期リースで貸し出しているのである。また、IT企業がよく用いる巨額なEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)ベースの評価倍率に、ウィーワークはふさわしくないという声も多く聞かれる。
これらの懸念から、次のような疑問が浮き彫りになる。現代のIT企業の定義は何か。IT企業が高額な企業価値評価を得ているのはなぜか。ウィーワークも同様な評価にふさわしいのか。ウィーワークの企業価値評価に対する懸念に裏付けはあるのか。
以下に、現代のIT企業とはどのようなものか、そしてなぜウィーワークはIT企業ではないのかについて、我々の見解を示す。
我々の意見では、成功を収めた現代のIT企業は、大きな設備投資を必要とせずに、業界全体を変革し、規模と範囲の拡大を猛烈なスピードで成し遂げ、莫大な利益を上げることができている。そして一般に、以下の5つの特徴を、すべてとは言わずともほとんど備えている。