私たちが話を聞いたのは、職務上、新人の採用と面接を担当する民間企業と非営利団体の幹部501人と、採用マネジャー500人である。その結果、彼らは米国で一般に考えられるよりも、大学に大きな信頼を寄せていることがわかった。

 回答者の63%が、米国の高等教育に「大きな信頼」または「非常に大きな信頼」を寄せていると答えた。経営幹部(82%)も採用マネジャー(75%)も、大学は時間とお金をかける価値のある必要不可欠な投資だと答えた。その恩恵としては、より多くの収入を得られる可能性だけでなく、知識を蓄積し、批判や分析のスキルを身に付け、目標(この場合学位取得)に集中する能力を高めることが挙げられた。

 若者が長期的なキャリアで成功を収めるために最も重要なこととして、圧倒的多数の採用担当者が挙げたのは、幅広い学習と分野横断的なスキルだった。これはAAC&Uが「リベラルアーツ教育とアメリカの約束(LEAP)」イニシアチブの一環として委託した、6つの先行調査の結果とも一致する。なかでも採用担当者たちが、大学で学ぶ最も重要な能力だと口を揃えて言うのは、口頭でのコミュニケーションと批判的思考、倫理的診断、チーム作業、書面でのコミュニケーション、そしてスキルと知識の実践的な応用だ。

 採用担当者たちが、特に貴重な経験と見なすのは、インターンシップや見習い制度だ。経営幹部の93%、採用マネジャーの94%が、インターンや見習いの経験者のほうが、採用可能性は高いと回答した。非営利団体でも、コミュニティ活動や奉仕活動の経験がある新卒生のほうが、採用する可能性は高いとしている。

 新卒者は知識やスキルを現実に応用する「準備がよくできている」と考える経営幹部は33%、採用マネジャーは30%しかいないことを考えると、インターン経験が重視されるのも意外ではない。また、経営幹部と採用マネジャーの過半数が、大学(単科大学を含む)は、学生が卒業時に、新入社員として成功する(そして昇進する)のに必要なレベルのスキルや知識を身につけているようにすべきだと考えている。

 企業や非営利団体が、狭い技術分野での訓練よりも、学生時代の就業経験を重視するのは、経営環境の急速な変化に対応するイノベーションに重点を置いているからだ。すなわち、「何よりも重要なのは大学での専攻だ」とか「キャリア上役に立つ専攻はごく一部だ」という一般に支配的な主張は、実のところ現実に即していない。

 何よりも重要なのは、学生時代の経験と、その経験から何を学ぶか(文化に関する知識や、物理的な世界と自然界に関する知識、知的スキルと実践的スキル、個人としての責任と社会的な責任、統合的かつ応用的な学習)である。実際、経営幹部の80%は、すべての学生はリベラルアーツと科学の両方で十分な基礎を学ぶべきだと考えている。実際、グローバルな知識経済では、リベラルアーツ教育を受けた新卒者の需要が高まっている

 21世紀のリベラルアーツ教育は、統合的でインパクトの大きな学習機会を拡充して、あらゆる学生が仕事でそのスキルを使うことを念頭に、筋書きのない現実の問題解決に取り組むものでなくてはならない。

 大学は、カリキュラムと職場でのニーズのギャップを埋めるだけでなく、もはや学位の価値にはコンセンサスが存在しないことを認める必要がある。それどころか、経営幹部や採用マネジャーは、新卒者の能力を評価して採用を決定するには、大学の成績証明書や履歴書よりも、その人物のスキルなどを記録したeポートフォリオのほうが役に立つと感じている。

 現代の学生は、生涯に平均11.9回の転職を経験する(その半分は18~24歳の間で起きる)ことを考えると、大学は企業や産業界と協力して、学生たちが幅広い仕事に対応できるように準備するだけでなく、現時点では予測もできない、未来の仕事に対応できるスキルを身につけられるようにすべきだ。

 私たちは、「リベラルアーツ教育は使えない」という思い込みを捨てなくてはいけない。そのような考え方こそが、現実の世界では通用しないのだから。


HBR.org原文:Yes, Employers Do Value Liberal Arts Degrees, September 19, 2019.

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リン・パスケレラ(Lynn Pasquerella)
全米カレッジ・大学協会(AAC&U)理事長