個人が直感的に問題解決をすると、魔法のような成果が生まれる
直感的な問題解決とは何かを理解するにあたり、まず認識しておくべきことがある。私たちは何らかの問題に取り組むとき――ネクタイを選ぶのであれ、二次方程式を解くのであれ同様に――以下の5つのステップを踏む。
これらのステップを順番に踏んでいけば問題解決に至るだろう、と思う人もいるかもしれない。しかし、心理学者らは過去数十年の間に、その反対が真実であることを発見してきた。私たちはステップを順番にではなく、非体系的に進める傾向があるのだ。
たとえば、ある人がオンラインで食べ物を注文するとしよう。
最初に、すぐにメキシコ料理という答えを出す(ステップ2)。しかし、この考えが浮かんだ直後に、それを検証してみると(ステップ3)、昨日もメキシコ料理を食べたことを思い出した。したがって別の答え、インド料理を思いつく(ステップ2)。だがそれを検証してみると(ステップ3)、お目当てのチキンティッカマサラはボリュームたっぷりで、自分の食欲では食べきれないかもしれない。
この時点で、ステップをさかのぼり、問題を定義する(ステップ1)。「どんな食事なら満足でき、食べすぎにもならないだろうか?」と自問するのだ。よりよい問いは、よりよい答えにつながり、寿司を思いつく(ステップ2)。本当に寿司が食べたいのかを素早く検討し(ステップ3)、注文へと進む(ステップ4と5)。
以上が、直感的な問題解決と呼ばれるものである。これはとても自然に行われており、人はこの方法で問題を処理していることを、まったく意識していない。問題に意識を向けさえすれば、あとはオートマ車の自動変速機のように、脳がギアチェンジをしてくれるのだ。したがって、直感的な問題解決は非常に効率的であり、魔法のようでさえある。
直感的な問題解決を集団で行うと、たいてい混乱に終わる
直感的な問題解決は、個人の場合にはあまりに効果的なため、集団でも同じようにうまくいくはず、と思われがちだ。人々は会議を開くとき、テーブルの周りに集い、集団的に意識を問題へと向け、あとは自動変速機に任せる。しかし往々にして、これは間違った結果につながる。
集団でうまく協働し、話の齟齬を防ぐにはどうすべきか。参加者全員が、問題解決における同じ1つのステップを、同時に踏んでいなければならないのだ。ところが、直感というものは本人にしかわからないため、グループ会議の参加者たちは、お互いがどのステップにいるのかを簡単には認識できない。結果として、各人が異なるステップから会議を始め、そのことに誰も気づかない。
あるソフトウェアチームが、不満を抱いている重要顧客について話し合うために集まったとしよう。その顧客は、競合他社への乗り換えを公然と口にして脅しをかけてくる。
ある参加者は、採るべき対策はすでに明らかだと考えており、その実施計画の策定を中心に話し合うつもりでいる(ステップ5)。別の参加者は、一連の代替策を考えようとしている(ステップ2)。さらに別の人は、この横暴な顧客に去られることがそもそも問題なのかを、いまだに見定めようとしている(ステップ1)。もしかすると、歓迎すべき事態かもしれない!
会議が進むにつれて、混乱が深まっていく。各参加者は自分でも気づかぬうちに、他の人に知らせぬままステップを変え続けている。結局、会議はまとまらず、いくつものステップをまたぎながら、そのどれ一つ達成されないままだ。
集団で問題を解決するには、「直感的な問題解決でこと足りる」という前提を捨て、代わりにもっと体系的なアプローチを取り入れなくてはならない。つまり、問題解決のステップ1つのみに的を絞るのだ。言い換えれば、オートマ車に乗るのをやめ、マニュアル車の運転を学び始める必要がある。