働く人とマネジャーが留意すべきこと

 働く人たちは、情熱についての固定観念を見直し、仕事の場だけでなく、仕事以外でも情熱を追求できることを思い出そう。一方、マネジャーは、部下がこのように発想を転換する後押しをすべきだ。

 仕事以外で情熱を追求するために、「ジョブ・クラフティング」の考え方を応用するのも一つの方法だ。ジョブ・クラフティングとは、自分が大切にしたいことを仕事の活動に反映させるために、仕事の課題やパートナーを変更するなどして、自分の仕事を自分で形づくるという考え方である。

 ジョブ・クラフティングは、仕事以外で情熱を追求する時間を確保するためにも実践できる。たとえば、勤務時間をある程度自由に決められれば、朝早く働き始める代わりに早めに切り上げ、夜は仕事以外の活動に時間を割けるかもしれない。

 仕事以外の活動は、新しいスキルを身につけ、新しい人やコミュニティと出会い、緊張を解く機会にもなりうる。では、どうすれば、自分にとって最適な活動を見出せるのか。

 まず、自分が何を大切にしたいかを問い、仕事でそれが可能か考えてみよう。もし仕事で情熱(やもっと軽い関心)を追求できなければ、それが仕事以外の情熱の対象を見つける出発点になりうる。

 仕事以外の場では、新しいことを試す自由があるはずだ。実験してみよう。情熱とは強まったり弱まったりするもの。ある活動をやめて、別の活動に乗り換えることは問題ない。同じテーマにのめり込んでいる人たちと接することが有効な場合もある。その人たちの情熱の引力に引き寄せられて、コミュニティ意識を持てるからだ。

 仕事以外に情熱の対象を見出すためには、ボランティア活動に取り組んでもよいだろう。そのような活動を奨励している企業も多い。食品大手のマースは、社員に有給のボランティア休暇を年間最大16時間認めている。

 この種の取り組みは、地域コミュニティとの絆を強化しボランティア活動参加者に誇りを持たせエンゲージメントと仕事への献身を強化することにより、会社にも恩恵をもたらすとわかっている。また、研究によれば、社員はこの種の活動を通じて、自分が大切にしている価値観を表現できるという。活動の目的に対して抱く情熱が強ければ強いほど、その活動を通して本人の得る恩恵が大きいこともわかっている。勤め先の会社がボランティア活動を行っているか、あるいは地域にボランティア活動の機会があるか調べてみるとよいだろう。

 社員がこうした行動に踏み出すのを助けるうえで、マネジャーが果たせる役割は大きい。せっかく社員が新しい趣味を始めたり、学校などで学んだり、社交活動に参加したりしたいと思っても、勤務時間が長かったり不規則だったりする場合や、仕事にすべてを捧げることが要求される場合は、それが難しくなる。

 そこで、リーダーが積極的に支援する必要がある。具体的には、「オフ」の時間を明確にしたり(仕事にじゃまされない時間を確保できるようにする)、ボランティア活動や、その他の活動の機会を用意したりしてもよいし、単にどのようなことに興味をそそられるのか考えてみるよう促すだけでも意味がある。

 情熱を追求することには、多くのメリットがある。しかし、仕事の場でそれができるのは、一握りの恵まれた人だけだ。多くの人は、大切にしたいことをプライベートで行うよう考えたほうがよい。もしそれを実践できれば、充実した人生を送り、仕事にも最良の状態で臨めるだろう。


HBR.org原文:The Unexpected Benefits of Pursuing a Passion Outside of Work, November 19, 2019.

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ヤン M. ヤヒモヴィッチ(Jon M. Jachimowicz)
ハーバード・ビジネス・スクール助教。組織行動部門と経営管理論を担当。主な研究テーマは2つある。1つは、社員が仕事に対して抱く情熱。重視しているのは、情熱のあり方が時間とともに変わっていくという点だ。もう1つのテーマは、経済的な不平等。人々が所得格差についてどのように考えていて、それが個人の感情や行動にいかなる影響を及ぼすかを研究している。特に、所得階層で最底辺に位置する人たちが将来成功を収めるために、どのような支援が可能かを明らかにしたいと考えている。コロンビア大学ビジネススクールで経営学博士号を取得。

ジョイス・ホー(Joyce He)
トロント大学ロットマンスクール・オブ・マネジメント博士候補(組織行動論)。主な研究テーマは、人がどのように他人に対する(しばしば不正確な)印象を抱き、それが組織にどんな影響を及ぼすか。これらの点について、ジェンダーの視点と感情の視点から掘り下げている。

ジュリアン・アランゴ(Julián Arango)
南米コロンビアの行動科学コンサルティング会社、アレアトリアの創業者兼ストラテジスト。ヤヒモヴィッチ助教のリサーチアシスタントも務める。中南米で行動科学の知見を活かして官民の組織に助言し、パフォーマンス向上を支援することに情熱を抱いている。ワーウィック大学で行動科学・経済学の修士号を取得。