マネジャーができること
マネジャーは、妊娠喪失を経験した人が職場に復帰するとき、大きな役割を果たせる。
その人が手紙や電話で事情を説明してきた場合は、お悔やみの言葉を述べ、どうすれば力になれるかを尋ねよう。同僚たちに話すべきか、話すとしてどのように伝えるべきかも尋ねる。同僚に伝えてほしいと言われた場合は、手紙を送ってくれればそれを回覧すると申し出てもよいだろう。子どもを亡くした人が同僚たちに語りたいと思う内容を書いてもらうのだ。そうすれば、職場に戻ったときに何度も説明せずに済む。
また、職場復帰に関して、なるべく柔軟に対応しよう。段階的に勤務時間を増やしたり、事情に応じてスケジュールを調整したりすべきだ。職場復帰した部下に過大な要求をしてはならない。子どもを失った人は、精神が落ち着かないものである。マネジャーがその点を理解していることを、本人に伝えよう。
しかし、部下が手ごわい課題を避けたがっていると決めつけてはならない。その人物に影響を及ぼす決定には、本人も参加させよう。子どもを失った人は、悲しみに暮れているかもしれないが、別に仕事の能力を失ったわけではない。仕事は、本人がその点を再確認する手段になる場合も多い。
マネジャーは、その部下を避けてはならない。通常の仕事上の会話をするだけでなく、ときおり様子を見るために声をかけよう。簡単なお見舞いの言葉を述べることを躊躇してはならない。また、力になれることがあれば教えてほしいと伝えよう。ただし、「仕方がなかったんだよ」とか、「また子どもをつくればいいよ」といったことは言うべきでない。この種の発言は、喪失の経験を矮小化し、ますます気持ちを沈ませかねない。
職場に戻ることで苦痛が強まるか、それともいくらか気がまぎれるかは、周囲の人たち、とりわけマネジャー次第という面が大きい。マネジャーや同僚がどの程度、その人物の喪失感を理解し、悲しみに寄り添えるかがカギを握る。当事者の痛みを尊重し、死をいたみ、共感を示すことにより、その人がいずれ前に進む手助けができる。
HBR.org原文:Going Back to Work After a Pregnancy Loss, December 05, 2019.
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サリー・マイトリス(Sally Maitlis)
オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクール教授。組織行動論・リーダーシップ論を担当。同校の「ハイ・パフォーマンス・リーダーシップ・プログラム」の責任者も務める。また、心理セラピスト、幹部向けコーチングにも携わる。
ジャンピエロ・ペトリグリエリ(Gianpiero Petriglieri)
INSEADの組織行動学准教授。医学博士号を持ち、精神医学の専門家。リーダーシップ開発の研究と実践を行う。同校の「マネジメント・アクセレレーション・プログラム」と、グローバル企業のリーダーシップ・ワークショップの指揮を執る。ツイッターは@gpetriglieri、フェイスブックはこちら。