有効だったのはどのタイプの投稿か?
私たちの分析によれば、ロイヤルティ・プログラムの会員には、関係型と知性型の投稿がとくに有効だった。一方、行動型の投稿は、会員でない顧客の売上げを伸ばすのに効果的だった。感覚型と感情型は、どちらのタイプの顧客の売上げを増やす効果も見られなかった。
関係型の投稿は、受け手をより大きなコミュニティ、すなわち、そのブランドの製品やサービスを核とするコミュニティと結びつけ、帰属意識を強化する。
このタイプの投稿は、包摂や絆を表現している場合が多い。ロイヤルティ・プログラムの会員はすでに、そのブランドとの関係を育んでいるので、関係型のメッセージを受け入れやすいのだろう。一方、会員でない人たちは、その種のメッセージにあまり引きつけられないのかもしれない。
私たちが研究したリゾート会社の投稿の中で、特に有効だったものの1つは、家族のリゾート活動を前面に押し出し、世代を超えた絆を描いた画像を載せたものだった。この投稿でロイヤルティ・プログラムの会員から得られた売上額は、通常の3.1倍に達した。
知性型の投稿もロイヤルティ・プログラムの会員に有効だった。この種の顧客は元々、そのブランドと深く関わっているので、詳細で知的な投稿を読むために頭を使おうという気になるのだ。
ある投稿は、凝った地図と一緒に、現地で開催されるイベントを網羅したリストを載せていた。この情報は、受け手が手間をかけて検討しなくてはならないものだ。これによりロイヤルティ・プログラムの会員から得られた売上げは、通常より85%多かった。
アウトドア用品のREIやディスカウントショップのビージェーズ・ホールセールクラブなど、会員制の小売業者は、商品の詳細な情報(REIの場合はアウトドアに関する情報も)を含めるなど、受け手に頭を使わせる知性型の投稿を上手に使っている場合が多い。
この種の投稿は、コンテンツの送り手も受け手も手間がかかる。それでもブランド側は、それだけの価値があると考えている。ロイヤルティ・プログラムの会員は強い好奇心を持っていて、ブランドとの関係を深めたいと思っている。そのことを企業も理解しているからだ。
行動型の投稿は、どちらのタイプの顧客にも効果を発揮する可能性があるが、私たちの研究によれば、ロイヤルティ・プログラムの会員でない人に対して、いっそう効果的だった。この種の投稿はあまり頭を使う必要がなく、非会員の顧客も製品・サービスとの関わり方をイメージしやすい。
リゾート会社の投稿では、たとえば週末にスキー場のスロープを滑ろうと提案するものがあった。この投稿に添えられていた画像は、非常にわかりやすいものだった。スキーヤーがリフトを降りる場面の画像だ。この投稿が非会員から引き出した売上げは、通常より82%多かった。
まだ歴史が浅く、忠実な顧客基盤が薄いブランドは、行動型のメッセージを打ち出すとよいのかもしれない。製品・サービスとの物理的な関わりを軸に、わかりやすいメッセージを発することで、まだ忠実な顧客とは言えない顧客からの売上げを伸ばせる可能性がある。
感覚型の投稿は、どちらのタイプの顧客にもあまり効果がなかった。これは、ソーシャルメディアの世界がいわば絶叫合戦の様相を呈し、多種多様な投稿がユーザーの関心を奪い合っているからなのかもしれない。ただでさえ刺激の多すぎる環境で、さらにメッセージの「音量」を上げる、つまり強烈な画像やマルチメディア・コンテンツを送り出すことは、どのタイプの顧客に対しても有効でなかったのだろう。
受け手の感情に訴えかける感情型の投稿も、両方のタイプの顧客に対して効果が乏しかった。ソーシャルメディアを閲覧すると感情が疲労する場合があるため、ますます感情に負担をかけるような投稿は歓迎されないのかもしれない。
ロイヤルティ・プログラムを上手に活用できず、会員とのコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの使い方を模索している企業も多い。たとえば、ロイヤルティ・プログラム専用のソーシャルメディア・アカウントを開設している企業もある。
たとえば、マリオットホテルは、「ボンヴォイ」と名づけた新しいロイヤルティ・プログラムのために、ブランド全体のアカウントとは別のアカウントを作成し、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムで活発に発信している。これにより、会員の反応がよいコンテンツを集中的に発信することができる。
私たちの研究は、あくまでも1社の企業のソーシャルメディア上の活動と売上げの関係を分析したものにすぎない。ほかのさまざまな業種の企業にも同じことが言えるかは、まだ明らかでない。
しかし、デジタル・マーケティングに携わる人たちにとっては、どのような方法が有効で、どのような方法に効果がないかを知るヒントになるはずだ。どのような投稿が好ましいかを検討する手立ても得られるだろう。
ロイヤルティ・プログラムの会員からの売上げを伸ばしたいなら、どのような投稿に効果が期待できるか(関係型と知性型の投稿が有効)、そしてどのような投稿に効果が期待しづらいか(感覚型や感情型の投稿でショックを与えるやり方はうまくいかない)をよく考えよう。そして、それに基づいてソーシャルメディアへの投稿を行うのだ。
HBR.org原文:Using Social Media to Connect with Your Most Loyal Customers, December 24, 2019.
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