アマゾン・ドットコムの2018年の売上高は2330億ドルで、ウォルマートの半分以下である。しかし、時価総額はウォルマートの3倍だ。そして、小規模事業者からは脅威と見られている。ビジネスを大きくして儲けるという夢が、アマゾンのせいで遠のくばかり――そう感じている小規模事業者は増える一方だ。
これに対し、自社は小規模事業の成長を促進している、というのがアマゾンの言い分である。
その主張によれば、同社は2019年、独立系のサードパーティー販売業者(主に中小事業者)のオンラインでの売上げを伸ばすために、インフラ、ツール、サービス、人員、プログラムに150億ドル以上を投資した。小規模事業者によるインターネットの力を活用した顧客基盤の拡大、ブランドの構築、売上げの成長を支援するために、同社はさまざまな研修プログラムを立ち上げた。
さらに、年間最優秀の小規模事業者賞、女性小規模事業者賞、30歳以下の小規模事業者賞という一連の賞を設立した。
加えて、ラストマイル(顧客に届ける最終区間)の配達ネットワークを通じて数百の小規模事業者を支援し、10万以上の雇用を生んだとしている。また、アマゾンで販売する中小事業者のうち、(2018年の)売上高が50万ドルを超えた出店者は全世界で5万以上、10万ドルを超えた出店者は約20万に達したという発表もある。
しかし同時に、アマゾンは競争を抑え込むために、不公正で反競争的な経営方針を採っているとも見られている。
たとえば、価格統一という方針を通じて、販売業者に対し、他のオンライン販路での値下げを禁じてきた。この方針は、2013年にEUの判決によって廃止された。
2010年、電子書籍の価格をめぐる出版社マクミランとの対立で、同社の本をアマゾンのウェブサイトから外すという対抗手段に出た。2014年には、(同じく電子書籍の価格をめぐる対立で)アシェットの紙の本を入手困難に追い込んだ。配達時間を遅らせる、割引を取り消す、事前予約を受け付けないといった手段によって、アシェットの売上減を招いた。
2015年、アマゾンはアップルTVとグーグルクロームキャストの製品を自社サイトで販売しないと発表。多くの人はこの動きを、同社のファイヤーTVと競合する製品の販売を阻むためだろうと考えた。
2019年、アップルとアマゾンの直販契約に対し、米連邦取引委員会が調査に入った。アップルの再生品を低価格で販売する業者を締め出している疑いがあるためだ。
また、アマゾンはデジタルコマースの支配的プラットフォーマーとなることで、オンライン市場の基幹的インフラをますます牛耳るようになっている。
そしてクラウドコンピューティングの市場シェアを最も多く握り、米国のほとんどの大都市で、倉庫と配送拠点からなる大規模な物流ネットワークを所有する。起点から最終地点まで配送網全体を管理するために、自社の物流機能に加えて他者の力も借りながら(個人事業主に配達業務を委託するアマゾンフレックス)、輸送と荷物配達を拡大し、フェデックスとUPSの手強いライバルとなっている。
アマゾンは他社と競争しながら、同時にそれら競合企業に対し、市場への参加条件を定めているのだ。他社はその条件に従う以外に、選択の余地がなくなっているのである。