景気回復の道筋は
どのようなものになるか
新型コロナウイルス感染症によるリセッションが起きた場合、景気回復への道筋がどのようなものになるかは、さまざまな要因に左右される。たとえば、需要がどのくらい後ずれしたり失われたりするのか、ショックが一時的なものなのか永続するのか、構造的なダメージが生じるのかといった要因だ。
具体的な景気のパターンとしては、大きく分ければ3つのシナリオが考えられる。V字型、U字型、L字型である。
●V字型
このシナリオは、古典的な実体経済型のショックが生じた場合のものだ。一時的に経済生産が落ち込むが、やがて成長が取り戻されて、年間成長率は完全に回復する。目下の悲観的なムードからすると楽観的すぎると思うかもしれないが、十分にありうるシナリオだと私たちは考えている。
●U字型
V字型の変形だが、こちらのほうがより深刻だ。ショックの影響が長く続き、成長は取り戻されるものの、経済生産は完全には回復しない。今回、このパターンになる可能性はあるのか。もちろん、可能性は否定できない。しかし、新型コロナウイルスが実際にもたらすダメージがもっとはっきりしないと、このシナリオの蓋然性が最も高いとは言えない。
●L字型
最も深刻なのはこのシナリオである。これが現実になるのは、新型コロナウイルスが経済に構造的なダメージを及ぼす場合に限られる。具体的には、労働市場や資本形成、生産性関数など、経済の供給サイドで壊滅的な問題が生じるケースだ。悲観的な想定をしたとしても、このシナリオが現実になるとは考えにくい。いずれ、世界経済はこの疫病を乗り越えることができるだろう。
ここでも歴史が手掛かりになる。2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や1968年の香港風邪(H3N2型インフルエンザ)、1958年のアジア風邪(H2N2型インフルエンザ)、1918年のスペイン風邪などの感染症流行を含む過去の経済的ショックのデータを見ると、すべてのケースで景気はV字型のシナリオをたどっている。