●周囲が安心できる環境をつくる

 自分自身を振り返り、好奇心をベースに会話をする準備ができたら、直接会ってミーティングをするにせよ、メールにせよ、口調に気をつける。

 望ましいのは、仕事の問題を話し合う時間を取れそうか、具体的な日時を約束ができそうかと確認することだ。予定を決めることは、あなたが時間を取って相手の話を聞くという意思表示になる。さらに、仕事上の重要な問題というテーマを定めて、いたずらに責任を追及するリスクを回避し、あなたが敬意を払って協力するつもりであることを示す。

 話し合いの機会をつくったら、質問から始める。たとえば、チームのメンバーが繰り返し仕事の納期に遅れているなら、「このところ、以前より仕事に時間がかかるみたいだね」と声をかける。そして、具体的な例を挙げてから、「元のペースに戻るために、私たちにどんな手助けができそうか?」と聞く。

 あるいは、4半期の目標に到達できなかったメンバーがいるなら、「この4半期は、仕事の進み具合はどんな感じか?」と直球で聞いたうえで、相手の最初の反応を確認する。

 性急に批判的なフィードバックを返さないこと。「どうしてあなたは……」「……すべきだった」「それは間違っている」など、一方的に判断を下すような言葉遣いも慎む。そうすれば、相手が前向きな意志を持っているという前提に立って、話を続けやすくなる。まずは相手の話を聞き、彼らの「意見」を真剣に受け止める。

 他人の要求や意欲に耳を傾け、心に留めて、共感することによって、その人の性格に対するあなたの思い込みから離れて、新たなことに気づきやすくなる。

 たとえば、彼らは「怠惰」「能力がない」「信頼できない」のではなく、チームの目標を明確に理解していないために、プロジェクトの優先順位を適切に判断できないのかもしれない。実力を発揮するためには、もっとフィードバックが必要なのかもしれない。あるいは、ほかに障害があるのかもしれない。

 こうした発見は、自発性の欠如や、最後までやり遂げないことの言い訳にはまったくならないが、根底にある問題がわかれば、進むべき道が明確に見えてくるだろう。

 目指す目標はわかっているが、周囲の経験を考慮していないと、恥をかかせたり、責めたりしやすくなる。チームのメンバーは、自分たちの声に耳を傾けてもらえると心から思えば、精神的な安心を感じやすくなり、あなたと一緒に問題解決に取り組もうとするだろう。あなたがリーダーでも、同僚として協力しようとしているときでも、前向きな気持ちで人の言葉に耳を傾けることは、あなた自身の目標達成にもつながる。