●まずは心を落ち着かせる

 自分の心を落ち着かせ、クリアにすることに意識を集中すると、身の回りで本当に起きていることや、自分の中から生まれてくるものに気づけるようになる。自分の思考を観察して管理し、「この世の終わり」的な思考に傾き始めたとき、それを食い止められるようになる。

 速報を知らせる音が鳴るたびに集中力を乱される(例:「なんてこった、また株価が下がっている」)のではなく、自分が選んだことに意識を集中し続けることができる(例:「在宅で仕事ができるなんてラッキーだ!」)のだ。

 この冷静で、「いま」に意識を集中した状態は、非常に需要だ。それはただちに、心がふらついて、ほかのことにとらわれるのを防ぎ、ストレスや不安のレベルを低下させる。

 もっと重要なのは、雑念から心をほどき、意識を集中する練習を繰り返すと、レジリエンスの「筋力」がついて、将来にわたり助けになることだ。自分の心を「いま」に置く練習をすると、あらゆるタイプの危機に対応し、乗り越える力がつく(心を落ち着かせ、マインドフルネスを高めるための無料アプリはたくさんある)。

 ●窓の外に目をやる

 絶望感や恐怖は過剰反応をもたらすことがある。不快な感情に浸っているよりも、なんでもいいから、何かをするほうがいいと感じることは多いものだ。

 この数週間、新型コロナウイルス感染症の影響で重要なイニシアチブが打撃を受け、筆者も落胆といら立ちを覚えてきた。しかし筆者は、すぐさま行動を起こすのではなく、よく考えることによって対応しようと努力してきた。自分の心を、悪いニュースの洪水から引きはがして、もっと安定した状態に置く必要がるとわかっていたのだ。

 そうでなければ、優れた計画を練り、リーダーシップを発揮することはできない。だから筆者は、仕事を減らし、窓の外に目をやり、考えることに、より多くの時間をかけている。その過程で、人間としてもリーダーとしても、最善の一歩は何かについて、よりクリアな答えが見えてきた。

 ●思いやりを通じて他人とつながる

 残念ながら、現在は国も都市も、感染拡大の封じ込めに注力しており、ストレスにさらされた人をサポートする多くのコミュニティは休止状態にある。学校は閉鎖され、イベントはキャンセルされ、企業は在宅勤務と外出禁止を掲げている。その「副作用」として、孤立感が高まり、恐怖や不安をうまく鎮めてくれる人や、グループから切り離されているという感覚が生まれている。

 現在の恐怖に満ちた風潮は、誰かを責めたり、避けたりといったスティグマ(ふの烙印)と思い込みももたらしている。また、「自分さえよければ」という自己中心的な考え方や行動も増えている。誰もが弱さを持ち、互いに依存しているという事実は、容易に忘れられがちだ。

 だが、社会的距離戦略のために、最低180センチ離れたところにいる人とでも、有意義なつながりが生まれることはある。そのきっかけとなるのは、思いやりだ。

 思いやりは、自分以外の人のためになりたいという意図であり、それは心の中から生まれるものだ。具体的には、日常生活で人とつながるとき、「どうすればこの人が、よりよい1日を過ごす助けができるだろう」と自問することから始まる。

 このシンプルな問いから、素晴らしいことが起こり始める。心が広がり、自分の目の前にいる人や物事がよく見えるようになり、自分にとってもその人にとっても、希望とチャンスに満ちた可能性が見えるようになるのだ。


HBR.org原文:Build Your Resilience in the Face of a Crisis, March 19, 2020.


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