
半導体製造装置の世界的メーカーである東京エレクトロンは、高い収益力を獲得することを目指している。その鍵を握るのが、全世界の顧客サービスを担うフィールドソリューション事業だ。米アプライドマテリアルズとの経営統合契約の解消を経て、世界の競合が行っているデータドリブン経営を学び「このままではいずれ後れを取る」という強い危機感を覚える中で、東京エレクトロンの強みである唯一無二のBest Serviceを体現して顧客に寄り添うと共に、新たに構築する独自の「サービスCRM」を基盤として世界のグループ会社を含めた情報戦略とそれを最大限に生かす業務改革を推進している。
業務やシステムの変革はもう先延ばしできない
PCやスマートフォンなどの電子デバイスから産業機器、自動車、公共インフラまで、現代社会に欠かすことのできない半導体。その製造装置の分野においてリソグラフィー、エッチング、成膜、洗浄といった広範なラインアップを有し、グローバルに事業を展開しているのが東京エレクトロン(以下、TEL)だ。2019年3月期から5年以内の中期経営計画では、売上高2兆円、営業利益率30%以上、自己資本利益率(ROE)30%以上という高い目標を設定。将来の成長を見据えた積極的な開発投資を継続し、グローバルNo.1の高い収益力を目指すとする。

取締役 常務執行役員
フィールドソリューション事業本部長、業務改革プロジェクト担当 春原 清氏
そしてこの目標を達成すべくTELが、最先端技術をどこよりも早く自社製の装置に実装していく「Shift Left」のアプローチと共に注力しているのが、顧客サービスを担うフィールドソリューション事業の強化である。
TEL 取締役常務執行役員 フィールドソリューション事業本部長、業務改革プロジェクト担当を務める春原清氏は、「当社が出荷した半導体製造装置の累計台数は全世界で7万台を突破しました。今後、IoTおよびTELeMetrics™(遠隔監視サービス)を活用してこれらの装置の予兆保全体制を確立し、お客様の生産ラインの稼働率を最大限に高めていくことで、フィールドソリューション事業を拡大していきたいと考えています」と語る。
さらに、この取り組みを背後から支えるのが「One TEL(ワン テル)」の推進だ。文字どおり「東京エレクトロングループは1つ」であることを意味するスローガンで、事業部門や工場、海外の現地法人といった垣根を越えて、グループシナジーを最大限に発揮するための業務改革を実践していく。「もともと1963年に半導体製造装置の技術専門商社として創業した当社は、その後メーカーへと転換し、現在では輸出比率が85%以上を占めるようになるなど、業態を大きく変えてきました。これに伴い業務フローやオペレーションの見直しはもちろん、各事業部やグループ会社ごとに個別最適で作られたシステムも統合していく必要があります。これまでその場その場での部分的な改善でしのいできた業務やシステムを、全体最適の観点で見直して業務を改革することは、もはや先延ばしできません」と春原氏は強い危機感をにじませる。