デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に入り、ビジネスの最前線で戦う営業組織にも、データやAIをフル活用した支援による効率化が求められるようになってきた。とはいえ、まだ旧態依然とした人海戦術から脱却できていない現場が多いのが実情だろう。先ごろマイクロソフトが主催したプライベートセミナー「SFA×AIで営業組織変革 DXドリブンの心得」では、AIやMR(Mixed Reality)といった最先端技術を使った、DX時代の営業支援のユニークな成功事例が数多く示された。

営業変革に必要な「デジタルフィードバックループ」

 いま世界ではDXを背景とした営業変革の兆しが見えてきている。しかし、日本は主要先進7カ国のなかで20年以上も労働生産性が最下位*1という状態だ。そのような状況のなかで、経済産業省は国をあげて(ITシステムの)2025年の崖を克服すべく、DX格付け制度の「DX銘柄2020」を今春から公表し、企業のテコ入れを行う方針だという。

*1参照:日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2019」
 
日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部 兼城ハナ氏。

 日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部の兼城ハナ氏は「そうでもしないと、なかなか日本企業は動かないという政府からのメッセージでしょう。実際にデジタル化で最も困っているのは、複雑化・高度化している営業現場です」と強調し、具体的な数値を示しながら説明した。

 たとえば、ある調査によれば、B2B市場で1案件の商談をまとめるためにアプローチする顧客数は平均6.8人。一方で1案件の営業活動に関わる社員数は16人が必要とされる。社内チームもリモートの社員が増え、今後もますます関係人数が膨れ上がっていくと予想される。

営業活動の複雑化に伴い、営業に携わる社内外の人の数は増加傾向にある。

 このような営業の負担を軽減するために、効率化を図るSFAツールを導入する企業も多いだろう。しかし、SFAは魔法の杖ではない。導入しても必ずしも負担が減り、売上を拡大できるとは限らない。担当者は、自分の時間全てを純粋な営業活動には充てられないからだ。

「そこで本当に効果のある支援を行うためには、営業活動の日常を全方位にわたって効率化したり、最高のCX(顧客体験)を与えられる提案やインサイトを示したりする仕組み作りが必要になるのです」(兼城氏)。

 これらの仕組みをDXで推進するために、日本マイクロソフトは「業務を最適化する」「製品を変革する」「社員にパワーを与えるツールを渡す」「お客様とつながる接点を強化する」という4本柱をポイントに掲げている。

 この4つを踏まえて、うまくデータを回していくには、まずデータを収集し、それを分析して、対応してアクションにつなげ、次の一手を打つというプロセスの循環が大切だ。このような「デジタルフィードバックループ」が営業に求められるなかで、いま日本の企業はデータ収集と分析までで止まっており、それ以降につながっていないことが課題となっている。

マイクロソフトが提唱する「デジタルフィードバックループ」のサイクル。