この40~50年、たばこを取り巻く環境は劇的に変化している。喫煙者が減少し、規制は厳しくなる一方だ。「最悪のシナリオを考えると、時間はあまりない」と話すのは日本たばこ産業の常務執行役員でたばこ事業本部 セールス担当の清川栄一氏。同社にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)は目的ではなく、生き残るための手段としてDXに取り組んでいるという。

たばこを取り巻く環境は変化している

日本たばこ産業  常務執行役員 たばこ事業本部 セールス担当 清川栄一氏

 日本専売公社の事業を引き継ぐ形で日本たばこ産業(JT)が1985年に誕生して34年、この間たばこの販売/営業は大きく変わった。かつては街角にあるたばこ屋が主な販売場所だったが、自動販売機の登場で変化し、現在はコンビニが重要な販売場所になっている。

 喫煙場所も激変した。かつてたばこは、ほぼどこで吸ってもよかったが、現在は許可されている場所でしか吸えないことが多くなった。2020年のオリンピックに向け、分煙の動きはさらに厳しくなることが予想される。JTも喫煙者に対するマナー啓発、喫煙場所の整備などを行っている。

 変化は商品でも見られる――「加熱式たばこ」という新しいカテゴリーの登場だ。JTも「Ploom(プルーム)」ブランドの商品を2013年に発売し、現在は3商品を展開している。紙巻たばこならばブランドや種類は違えど喫煙方法は同じだったが、加熱式たばこは商品ごとに使い方や特徴が異なるため、その啓発や提案が必要だ。これは同社にとって初めての取り組みとなった。

 このような状況を説明しながら、「たばこ販売店様とはもちろん、お客様と直接コミュニケーションすることの重要性が高まっています」と清川氏はまとめる。コミュニケーションに関連して、たばこが直接関係する課題はもちろん、たばことは関わりないがその地域をもっと活性化したいと考えている団体や行政と、JTがこれまでやってきた清掃活動「ひろえば街が好きになる運動」などを通じて地域の問題を解決しながら信頼関係を作り、「地域の皆様との対話の機会を確保すること」が重要だという。

 日本たばこ産業の2018年度売上2兆2160億円のうち、国内たばこ事業は28%を占めるに過ぎない。紙巻たばこ販売本数は2003年の2分の1以下に減少しており、加熱式たばこなど、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品(RRP:Reduced-Risk Products)へのシフトが顕著になっている。