メールソフトをベースに営業ツールを最適化

 兼城氏は、この課題を解決し、次の一手を打つために、メールソフトにCRM(SFA)を組み込んだマイクロソフトの事例をヒントとして示した。

 Microsoft Outlook上にCRM/ERP統合クラウド型ビジネスアプリの「Microsoft Dynamics 365」を連携させると、顧客からメールを受信した瞬間に、企業ドメインをキーとして、顧客情報や進行案件などを把握できる。さらにOutlookのカレンダーや、Dynamics 365に顧客訪問などの予定を登録すれば、自動的にデータが引き継がれ、情報共有も行える。

他のソフトウェアに切り替えることなく、メールソフトから一元的にほとんどのビジネスデータにアクセスしたり、編集したりできるようになる。

 兼城氏は「このような工夫で、我々の営業改革は5年間で大いに進展しました。蓄積データをAIで分析し、商談につながるインサイトの発掘や、未発掘の新規案件の提案、解約の回避なども行えるようになりました。さらに可視化データにより、かなり正確な経営予測も実現できているのです」と自信を見せる。

 日本マイクロソフトでは、営業活動の迅速な決定と実行を徹底し、商談を早く回してクロージングするために、Dynamics 365とMicrosoft 365を連携させている。そして社内外のさまざま情報の可視化や、社員同士の交流とコミュニケーションを図っているわけだ。

 また、あまり知られていないが、同社はAI研究の論文引用ランキングで首位の座についている。この成果は、エージェント、アプリ、サービス、インフラなど、同社の製品に組み込まれている。“誰でも使えるAI”を標榜し、「AIの民主化」に取り組んでいるのだ。

「Microsoft HoloLens 2」を使った海外家具メーカーのユニークな営業変革の事例も

 続いて、同社ビジネスアプリケーション事業本部の坂口勇磨氏が、最先端技術のMixed Reality(MR)を活用したユニークな営業変革の事例を披露した。

 MRとは、ユーザーが物理(現実)世界に居ながら、物理とデジタルの世界を融合させ、物理、デジタル両方のオブジェクトとやりとりできる技術だ。同社ではMRを実現するツールとして、Windows 10搭載のスタンドアローン型デバイス「HoloLens 2」を投入している。これを頭に装着すれば、3Dオブジェクトやデジタル情報などを現実世界に映せるようになる。

HoloLensを活用したNatuzziのMRショッピングシステム。

 坂口氏が紹介したのは、HoloLensを導入したイタリアの家具ブランド「Natuzzi」(ナツッジ)の事例だ。旗艦店舗には本物の家具が3つ置いてあり、顧客はHoloLensをかけてそれを見るのだが、その際に店員が家具の色を変えたり、配置を変更したりできる。同社は、このCX(お客様経験)が功を奏し、約30%も購入率が増加したうえ、顧客の購入までのリードタイムも30%以上短縮されたことから、HoloLensを全世界の300店舗に展開する方針だという。

モバイル端末向けMRアプリ「Microsoft Dynamics 365 Product Visualize」活用例。工場で購入を検討している工作機械の設置イメージをMRによって確認することができる。

 一方、営業時にHoloLensのようなデバイスを装着してもらうのはハードルが高い場合もあるだろう。そこでスマホやタブレットなどのモバイル端末を利用したMRアプリ「Microsoft Dynamics 365 Product Visualize」 も紹介された。営業担当者向けのトレーニングをホログラムで実施することで、大型製品を扱っている製造業などにおいてトレーニングのための勉強会を開くコストを削減できるといった例や、顧客の工場において機械の3Dモデルを提示することで、設置した際の具体的なイメージを持ってもらい、営業のリードタイム削減や購入率を向上するといった例が示された。