AIは、まず営業組織で使ってみる
本セミナーでは、日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 ポストモダンERP推進センタの林 由紀雄氏からも、AIの活用によって営業の効率化に成功した事例が紹介された。同社は、1500人を超える Dynamics 365の技術者を擁し、750社以上の同ソリューションの導入実績を誇っているという。

林氏は、営業活動を取り巻く環境変化について「これまでより深く顧客を知り、真のニーズへ対応することが必要になっています。しかし従来のSFAは活用度が低く、効果も限定的でした。そこでAIの積極的な活用が、ブレークスルーの方向性の1つになるでしょう」と指摘する。
特に日本では、AIを労働力の補完や業務の省力化、新しい価値創造や付加価値向上のために使いたいというニーズが強い。2年前のデータでは、AIは5%ほどしか使われていなかったが、仕事のパートナーとしてAIを導入することへの抵抗感は少なかった。
現在では、たとえばマイクロソフトの「Azure Cognitive Services」では、視覚、音声、言語、決定、検索などのAIサービスをWeb APIとして提供するなど、ビジネス市場でAIを簡単に展開できる環境が整ったことで、最新AIサービスを活用した事例が生まれている。
営業活動の自動化まではハードルが高いとしても、ある程度を人間がカバーすれば、それなりに使えるケースは多い。林氏は「AI部品による既存活用システム」「検索の効率化」「判断を含む人間の作業代行」という3種のケーススタディを示した。
まずAI部品による既存システム活用では、既存のシステムに音声や画像OCRなどのAI部品を導入することで、1日の多様な営業活動を最適化する。

「日々の予定やタスクを提示し、クロージングが近い顧客や類似案件など、状況に応じたネクストアクションを喚起したり、顧客のエンゲージメントを高める効果的なメール作成を支援したりします。日報の音声入力や、AIアシスタントによるスケジュール調整と資料作成、自動翻訳による多言語コミュニケーションのサポートなどもできます」(林氏)。
検索の効率化では、キーワードで検索しにくいFAQをAIで検索したり、報告書などの文章に隠れている重要なメッセージを見つけて分類したりすることで、担当者によって異なっていたスキルの均質化が可能になる。
AIによる検索は、言葉だけでなく、画像にも適用できる。たとえば、画像認識でマッチングしたチョコレートやパンなどのアレルゲン情報の表示や、画像OCR(バーコード)で製品や個体番号を解析して、対象機器、顧客情報、設置場所などの特定も可能になる。
より高度なケースでは、判断を含む人間の作業代行への適用も行える。地図情報と、SFAなどが有する営業情報や外部の統計情報をAIで分析し、どこのエリアをどんな順番(パス)で回ると効率的か? あるいは売上を伸ばせるのか? といった営業活動の支援ができる。
「店舗の売上額や販売額の推定のほか、新規開拓時に、空き時間を利用して近くの見込み客を訪問したり、契約確率の高い新規顧客を回れるように、移動時間やルーティングを最適化したりするなど、事前に機械学習の結果を地図上にマッピングすれば、付加価値の高い営業活動を実現できます」(林氏)。

このようなAIを活用した画像の認識や検索、自動翻訳などは、前出のDynamics 365、Azure Cognitive Servicesといったマイクロソフトのサービスによって容易に実現できる。また履歴情報を高度に活用したFAQレコメンドや、応対履歴自動カスタマイズに関しては、日立ソリューションズの「活文 知的情報マイニング」で対応が可能だ。
自動車メーカーのスズキでは、自動車の不具合情報を分類するために、国交省のオープンデータを教師データとして利用し、ディーラーからの品質レポートに適用している。これによりテキストから重要度の一次判定をバラツキなく実施して工数削減と時間短縮を実現すると共に、品質状況も迅速に把握できるようになった。

林氏は「AIの導入ハードルは、かなり下がってきているため、まず営業組織で使ってみることをお勧めします。その際には、学習済のAIサービスを使うと、効果的に適用できるでしょう。あとはアイデア勝負です。どんな使い方ができるのか、いろいろとチャレンジしてみることが大切だと思います」と提案して締めくくった。
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