リモートワーカーを支援するためにできること
以上のように、リモートワークにはさまざまな問題がついて回るが、在宅勤務への移行を助けるために、マネジャーが比較的素早く、そしてコストをあまりかけずに採用できる対策もある。いますぐ実行できることには、たとえば次のようなものがある。
●1日1回の報告をスケジュールに組み込む
リモートワークを成功させているマネジャーは、1日1回、部下と電話で話すようにしている場合が多い。それぞれの部下が独立して業務を行っている側面が強ければ、マネジャーは順番に一人ずつ電話を掛けてもよい。あるいは、チームとして協働して仕事に取り組む側面が強ければ、グループ通話を利用してもよい。
いずれにせよ重要なのは、いつも決まった時間に、定期的に話すようにすること。そして、その会話の際に上司にさまざまな相談ができると、メンバーに思わせることも大切だ。自分の不安や疑問に上司が耳を傾けてくれると、メンバーが感じられるようにする必要があるのだ。
●複数のコミュニケーション手段を用意する
メールだけでは十分でない。ビデオ会議など、情報量の多いコミュニケーション手段も有効だ。ビデオ会議を用いれば、リモートワーカーでも対面と同様の視覚的情報を得ることができる。
特に小規模なグループの場合、ビデオ会議の利点は多い。たとえば、同僚同士の「相互理解」が深まり、孤独感をやわらげる効果も期待できる。また、込み入った話やデリケートな話をするときも、ビデオ会議のメリットが大きい。動画は、文章や音声だけのコミュニケーションよりも人間味を感じやすいからだ。
もっとも、詳細な視覚的情報よりコラボレーションの迅速さのほうが重要なときもある。シンプルで堅苦しくない会話や、時間的制約の大きいコミュニケーションには、モバイル機器で使えるメッセージングツール(スラック、ズーム、マイクロソフト・チームズなど)が便利だ。
あなたの会社がまだテクノロジー・ツールを導入していなくても、差し当たりの問題を解決するだけであれば、ツールの簡単版を安価に入手できる。ただし、ツールに適切な水準のデータセキュリティが確保されているかを確認することを忘れずに。ツールを採用する前に、自社のIT部門と相談しよう。
●コミュニケーションのルールを定める
マネジャーがコミュニケーションの頻度や手段、タイミングの基準を定めれば、リモートワークの効率性と満足度が高まる。たとえば、「毎日定例のミーティングはビデオ会議を利用し、緊急の連絡はインスタントメッセージを利用する」といった具合だ。
また可能であれば、マネジャーは、日中にメンバーからの連絡を受けやすい方法と時間帯も伝えよう(「電話やビデオ通話に対応しやすいのは遅い時間帯ですが、早い時間帯に急ぎの連絡があるときはテキストメッセージを送ってください」など)。
加えて、メンバー同士のコミュニケーションにも(あくまでも度を越さない範囲で)目を光らせるべきだ。メンバー同士が適切な情報共有をしているか確認したほうがよい。
マネジャーはできるだけ早く、こうしたルールを決めたほうがよい。理想的には、最初のオンラインミーティングで決めたほうがよい。その際、具体的にどのようなルールを決めるかよりも重要なのは、すべてのメンバーがコミュニケーションのルールに関して共通の認識を持つことだ。
●リモートでの交流の機会を設ける
リモートワークをしているメンバーが社交する(つまり、仕事と直接関係のない雑談を交わす)機会をつくることも非常に重要だ。この点はリモートワーク全般に当てはまるが、突然リモートワークに移行せざるをえなくなった人にとっては、特にその必要性が大きい。
一番手っ取り早いのは、オンラインミーティングの冒頭を仕事とは関係のない会話に充てるという方法だ。「最初の数分は、みんなの近況を話すだけの時間にしましょう。週末はどうだった?」などと切り出せばよい。
それ以外には、バーチャル・ピザパーティ(ビデオ会議の時間に合わせて全員の家にピザが宅配される)や、バーチャル・オフィスパーティ(前もって全員にプレゼントの小包を届けておき、みんなで一斉に開封する)なども有効かもしれない。
「わざとらしい」「押しつけだ」などと感じるかもしれないが、リモートワークの経験が豊富なマネジャー(と働き手)は、この種のバーチャル・イベントの効用を証言する。リモートワークにつきものの孤独感をやわらげ、チームへの帰属意識を高める効果があるという。
●励ましと情緒面のサポートを提供する
リモートワークへの移行が急に決まった場合は特に、マネジャーがメンバーのストレスを認識し、不安や心配事に耳を傾け、共感を寄せることが重要だ。リモートワークを開始したばかりの部下が明らかに苦戦しているにもかかわらず、ストレスや不安を口にしない場合は、困ったことはないかと尋ねよう。
「リモートワークの調子はどうですか」といった漠然とした問いを投げ掛けるだけでも、部下から重要な情報を得られる可能性がある。質問してはじめて打ち明けてくれる話もあるかもしれない。
メンバーの言葉を注意深く聞き、自分が正しく理解できているかを確認するために、手短に話の内容をオウム返しにするとよいだろう。そうした会話の際は、(マネジャー自身ではなく)メンバーのストレスや不安を主に話題にするようにしよう。
EI(感情的知性)と感情伝染に関する研究によれば、状況が急激に変化したり、危機的状況が発生したりしたときにメンバーが示す反応は、マネジャーの様子に影響を受ける。マネジャーにストレスや無力感が見て取れれば、心理学者のダニエル・ゴールマンが言うところのメンバーへの「浸透効果」が生まれる。
有能なリーダーは、2つのアプローチを同時並行で進める。メンバーのストレスと不安を認めてあげる一方で、メンバーが自分のチームに自信を持てるようにするのだ。
「大丈夫。私たちならできる」「難しい状況ではあるけれど、私たちは乗り切れる」「私たちの強みを活かす方法を考えよう」などと言えばよい。こうした心理的サポートを提供できれば、メンバーは使命感と集中力を持って課題に取り組みやすくなる。
最後に、はじめてリモートワークを試みるマネジャーに励ましの言葉を送りたい――「大丈夫。あなたならできる」。リモートワークでメンバーをマネジメントするための、あなたなりのコツがあれば、ぜひ教えてほしい。
HBR.org原文:A Guide to Managing your (Newly) Remote Workers, March 18, 2020.
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