
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威をふるう中、政府も企業も対応が後手に回り、世界経済は大きなダメージを受けている。今後の展開が誰にも見通せない状況で、その影響を詳細に予測をすることは不可能である。だが、過去の危機を参考に、より大きな視点からシナリオを描くことは、これからの打ち手を講じる際の参考になる。本稿では、危機から景気回復に至るまでの3つのシナリオを提示する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界に広がる中、各国政府は、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)など、効果が実証されている防疫対策を採用し、感染拡大を断ち切ろうとしてきた。
しかし、そのような措置を取った結果、ヒトやモノの流れが寸断されて経済活動が失速し、世界規模でリセッション(景気後退)が始まりつつある。いま、新型コロナウイルスそのものと同じくらい急速に、経済へのダメージが世界に広がっている。
わずか数週間前までは、こんなことになるとは思われていなかった。感染が世界に拡大し始めた頃、政治家や官僚、マーケットは、過去のさまざまな感染症流行時のパターンを参考にしたために、早い段階でソーシャル・ディスタンシングを実行するチャンスを逃してしまった。今回、もっと早期にこの種の対策を行っていれば、より効果は大きく、コストは小さかったはずだ。
その後、感染拡大が大幅に進行し、経済へのダメージが大きく膨らんでいる。しかも、この危機はいくつもの面で前例がなく、情報も十分でない。今後の展開を予測することは、ほぼ不可能と言ってもよい。
このような未経験の世界では、世界規模のリセッションが近づいていると指摘するだけでは、経済の先行きについて見えてくることはあまりない。せいぜい、マイナス成長になることを覚悟できるだけだ。
いま知りたいのは、「経済への打撃と、その後の景気回復の道筋はどのようなものになるか」「世界各国は、コロナ前の経済生産と経済成長率を取り戻せるのか」「コロナ危機は社会と経済のあり方を恒久的に変えるのか」といったことだ。