(1)流動性を確保する
スモールビジネスにとっての大きな課題は、一つには現金の確保である。
事業にリスクは付き物だが、スモールビジネスはとりわけ脆弱な立場にある。連邦政府の中小企業庁(SBA)によると、創業から5年を超えて存続するスモールビジネスは、全体の約半数にすぎない。
家賃、人件費、光熱費などの間接費を支払った後には、ごくわずかな現金しか残らず、創業後の数年は特に厳しい状況に置かれる。これに輪をかけるように、パンデミックのせいで事業が停滞して収入がなくなり、新たな従業員扶助が発生するため、事業主は追い詰められるだろう。
スモールビジネスの事業主がこの当面の課題に立ち向かうには、速やかに現金を給付して倒産を防ぐよう、政策措置を要求すべきである。その一例が「スモールビジネス雇用安定化基金」の設置に向けた提案である。
コロナ危機以前に支払い能力を有していたスモールビジネスへの金融支援に関して、危機後12ヵ月以内に従来と同数の従業員を再雇用することを条件に返済を免除するよう、財務省に求めるのだ。これが実現すれば、極めて脆弱な事業者の資金繰りが即座に改善し、従業員に滞りなく給与が支払われ、ひとたび顧客が戻ってくれば事業が成長するだろう。
提案には、SBAによる中小企業向け緊急融資(SBAエクスプレス)の上限額を35万ドルから100万ドルに引き上げる案も盛り込まれている。この種の提案は市場を安定化して、事業主のみならず従業員とその家族にも安心をもたらすうえで、極めて重要だと考えられる。
(2)資本調達を万全にする
フランチャイズ事業の場合、現金を確保しただけでは安心できない。
サービス業界においては、売上原価を構成するのは主として人件費である。スモールビジネスの多くはSBAから融資を受けており、この債務が事業主にとってさらなる重荷となりかねない。需要が減少し、有給休暇引当金を積まなくてはならない状況では、現実問題としてレイオフが懸念される。
給与支払いや経費負担(有給の病気休暇や育児介護休暇、融資返済を含む)を助けるために、スモールビジネスを対象とした支援策が求められる。すでに提案中の、経済と信頼感の回復、利用者のつなぎ止めに向けて3000億ドルを拠出する法案(Restoring Economic Security, Confidence, and User Endurance 〔RESCUE〕 Business Act of 2020)は、まさにこの目的に沿ったものだろう。
この法案には、中小企業法第7条a項に基づくSBAの主力融資の当事者双方に対して、すべての手数料支払いを1年間猶予し、金額を問わず全融資の90%を債務保証する内容が盛り込まれている。併せて、新型コロナ危機を踏まえて、地場の中小企業に事業の継続、ひいては従業員の雇用維持に必要な時間的猶予を与えるために、SBAエクスプレスの上限額を35万ドルから100万ドルへ引き上げる規定も含まれる。
(3)連邦議会に嘆願する
スモールビジネスへの資金支援を連邦議会に嘆願するのは、気の遠くなるような話であり、首都ワシントンから遠く離れた町で働く人々にとっては「身の丈を超えている」と感じられるかもしれない。
だが、この危機的な状況下で、私たちの声は極めて大きな意味を持つ。緊急の景気刺激策など、スモールビジネスに影響を及ぼすいかなる経済政策に関しても、大企業だけが発言する状況を見過ごすわけにはいかない。
連邦議会へは個々に嘆願してもよいし、他の起業家と連携するのもよいだろう。手立ては無数にある。ソーシャルメディア、手紙、メール、電話はいずれも有用である。むしろ肝心なのはメッセージの中身であり、「スモールビジネスは地域社会や経済にとって不可欠な存在である。我々は新型コロナ危機の渦中で救済措置を必要としている」と訴えるべきだ。
地域社会の一員であるスモールビジネスは、地元に雇用と経済成長をもたらしている。大半の米国人は、近隣の状況を通してパンデミックの影響を肌で感じている。コーヒーショップ、レストラン、ジム、ペットショップなどが軒並み休業し、友人や家族が失業に追い込まれているのだ。
いまこそ立ち上がるべきである。「ささやかな予防は、幾多の治療にも勝る」という諺もある。パンデミックが発生した状況下、この金言は顧客だけでなく、スモールビジネスの事業主にとっても有益である。
フランチャイズ業界は、新型コロナウイルス感染症の影響だけで2万6500のスモールビジネスを失う見込みであり、適切な政策が発動されないなら、倒産件数は3万3000にまで増えるだろう。他業界におけるスモールビジネスの倒産件数は、これをさらに上回るおそれもある。
生き残るうえでは、必要な資金を確保して、流動性を最大限に高めるのが何より重要である。だからこそ、このメッセージを、私たちの今後の懐事情を左右する連邦議会に伝えよう。
HBR.org原文:What Small Businesses Need to Survive the Coronavirus Crisis, March 27, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
新型コロナウイルス対策で企業が自問すべき8つの問い
コロナ危機で従業員を一時解雇する前に検討すべき5つのこと
新型コロナウイルスはいかなる経済的ショックをもたらすのか