注意散漫という課題
リーダーとして不確実な時期を乗り切るには、素早く俯瞰して、変化する全体像を掴み、その後、実行すべき短期的な行動に焦点を絞る必要がある。
メールや会議、ニュースの量が増えて情報が押し寄せていると、それが不可能に思えるかもしれない。情報過多は注意散漫のリスクを増大させ、意識を持続させることや、集中することが困難になる。
思考が、あるものから別のものへと移る注意散漫なときは、敏捷ではない。戦略的な焦点に欠け、入念に優先順位を付けることもなく、注意を引かれるものに従っている。
注意散漫に対処するには、集中と認識を行き来する、思考の敏捷性が必要だ。
集中は、目の前のタスクという一点に注意を向け、優先事項を効果的に実行する能力だ。認識は、全体像と未来、そして待ち受ける変化を見る能力だ。認識によって環境の変化を察知して評価し、組織のメタの視点を維持し、最終的にノイズ(騒音)からシグナル(有益な信号)を分離することができる。
全体像を把握したうえで求められるのが、断固とした対応を取り、必要な能力を活用し、規律をもって実行するための集中力だ。
集中と認識の間の敏捷性をテストするために、次のことを試してほしい。この文章を読みながら、突然、書かかれている言葉から焦点を外し、今日1日の優先事項を認識してみよう。
どうだろう? 一瞬のうちに切り替えることができたか、それとも思考にタイムラグがあっただろうか? 思考の一部が、いま読んだ言葉を引きずっている?
テストの結果がよくわからなければ、次を試してほしい。集中する対象を、詳細なことから全体像の認識へと変えてみよう。
注意散漫を抑制し、思考の敏捷性を高めるには、リーダーとしてのあなたのいまの職務を、短距離走の視点で考えるといい。複数合わさればマラソンになるが、一つひとつが別のレースなのだ。
それぞれのレースの間は、少し休みを取ろう。わずかな時間でも心を落ち着かせること。完了すべきものがないときは、1日を通して短時間の休みを何度も取る。休みを取ることで、集中と認識が深まり、自分が正しいことに集中しているかどうかを判断する助けになる。
(ちなみに思考の敏捷性は、心の筋肉を鍛えて集中力と認識力を高める、マインドフルネスの実践と密接に関係している。マインドフルネスの実践に役立つ無料アプリは多数ある)