
新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちが信じてきたさまざまな常識を破壊した。この危機を契機に、社会の至る所で新しい扉が開かれ始めている。ビジネスのあり方にも大きな変化が見られる。株主至上主義の呪縛から解き放たれ、社会の支援に乗り出す企業は多い。いまこそ、「よいビジネス」とは何かを改めて考える機会である。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大する中、私たちが信じていたことの多くが間違っていたことが示されている。
数ヵ月前には不可能と思われていたことが、突然実現した。何千もの企業や大学、その他の組織が、数年ではなく数日で完全にバーチャルな環境に移行することができた。政治や不平等によって分断された社会は、即座に集団の連帯を示した。中国の大気汚染は、たちまちのうちに消えた。
社会通念が一つひとつ崩れ、大胆で新しい発想への扉が開かれた。昨年の終わりには、未知の病の治療法の開発には数年かかると私たちは主張していただろう。しかし、1月に新型コロナウイルスの塩基配列が決定されてから90日以内に、79種の治療法と49種のワクチンの臨床試験200件が実施された。人類にとって何が可能で何が不可能かという概念は、一夜にして覆された。
つまり、いまはドグマに挑戦するときだ。なかでも重要なのが、社会におけるビジネスの役割をどう理解するかという点である。