悪い職場は業績も悪い

 米国政府の新型コロナウイルス対策への支援策をめぐる論争で明らかになったように、多くのサービス業は、財務状況が良好に見える会社でも、すでに問題に見舞われている。その問題の大部分は、人件費の最小化を重視したことだ。それが、低賃金、不十分な福利厚生や人員配置、常勤スタッフを可能な限り減らすことにつながった。

 このような悪い職場では、現場の従業員は十分なトレーニングを受けておらず、多くの場合は十分な能力を備えず、軽視されている。医療費の支払いや日々の食事を常に心配している状況で、仕事に集中することはできない。

 時給が1ドルでも高い仕事が他にあれば、彼らは辞めてしまう。部門マネジャーは、高い離職率とオペレーションの問題のために目先のことで忙しく、従業員を育成したり、本当の意味でビジネスを管理したりする時間はほとんどない。

 悪い職場では顧客へのサービスが行き届かず(なかには顧客を危険にさらす状況もある)、企業は説得力ある価値提案や変化する顧客ニーズへの適応ができなくなる。こうした理由とバランスシートの脆弱さが相まって、ボーダーズトイザらスシアーズ、そして最近ではニーマン・マーカスJクルーJCペニーなど、多くの企業が経営破綻に追い込まれた。

 小売業者にとっては、パンデミック後の危険性がいっそう高まっている。ロックダウン(都市封鎖)措置により、オンライン・ショッピングへの大幅なシフトが余儀なくされている。

 店舗での買い物ができるようになれば戻ってくる客もいるだろうが、多くの人は新しい買い物の習慣ができているはずだ。営業が再開すれば、小売業者はオペレーションの多くの課題を伴う電子商取引という、新たな激しい競争に迅速に適応しなければならない。

 さらに、店頭では顧客がオンラインでは得られない明確な価値を提供する必要がある。その価値を提供するには、充実した顧客サービスにつながる働き方をする、有能でやる気のある労働者が必要だ。

 高い賃金、手厚い福利厚生、充実した研修、十分な労働時間、定期的な勤務、従業員の生産性と貢献度を最大化する働き方、適切な人員配置などのように、企業がよい職場を通じて従業員に投資すればするほど、店頭での売上げや顧客ロイヤルティの向上、製品、サービス、作業プロセスの改善という形で報われる。パンデミックの前は何とか乗り切れていた悪い職場は、新たな圧力の下では崩壊するかもしれない。