たとえば、夫も妻も育児休業を取得する(すなわち通常の仕事のルーチンを長期間中断する)カップルを対象とした研究では、こうしたカップルは長期的に、育児や介護、および家事においてバランスの取れた、平等なアプローチを持続する傾向があることが明らかになっている。
考えてみてほしい。夫婦ともにフルタイムで在宅勤務せざるをえなくなっても、やはり女性のほうがより多く家事をし、子どもの世話をし、宿題を見ている。
パンデミック以前からそうだったが、最新の研究では、子育てとオンライン授業とその他の家事をやりくりしながら在宅勤務をすることで、女性の負担はいっそう増し、プライベートと仕事の両方でストレスを増大させていることがわかっている。
リーン・インが公表した新しいエビデンスによれば、女性の4人に1人は深刻な不安を抱えており、女性の半数以上がうまく眠れないと回答している。フルタイムの仕事と家庭を持つ女性は、やるべきことが多すぎて対処しきれないと考える人が、男性よりもはるかに多かった。
たしかに、ほとんどの男性は、家事や子どもの世話、自宅学習において、女性と同等の貢献はしていないかもしれない。しかし、彼らもいまでは、無償労働と有償労働のバランスをとる難しさをじかに経験して、理解するようになってきた。
働く親を対象とする最新の研究では、母親の2倍の数の父親が、ロックダウン中の育児や介護は非常に大変だと答え、父親の38%が自分は家庭でもっと無償労働をすべきだと強く考えていた。
男性もまた、個人的な関係でも仕事上の関係でも、つながることと弱さをさらすこと、共感が大切であることの理解を深め始めている。コロナ危機下のテレワークはしばしば、互いに自分の状態や気持ちを短く報告することから始まるので、精神的サポートを提供し、誠意を示し、同僚と体験を共有しながら、チームワークや信頼、職場のアイデンティティを形成するよい機会になっている。
働く父親も、子どもとの関係を築くことを楽しみ、パートナーのキャリアを支援するという点で対等な関係とはどういうものかを学びつつある。
最後に、利用しやすく経済的にもさほど負担にならない子どもの預け先の確保は、家庭にもビジネスにも不可欠だ。コロナ以前は、共働きの親の約80%が何らかの有償保育を利用していたが、ロックダウン中は、働く母親の3分の2が自分一人で子どもの世話をしていると報告している。
ほとんどの企業の上級リーダー職は、男性が女性よりも圧倒的に多い。いまこそ、男性リーダーが女性の味方として、テレワークと家庭内パートナーシップとのバランスをとった経験から得た新たな知見を、目的意識を持って活用する絶好の機会だ。真の意味でジェンダー平等へと大きく舵を切るのである。
男性リーダーは組織に変化をもたらす主体として、ビジョンと勇気を示して、女性と真の意味で協働し、これまでの社の方針や慣行、制度を再構築し、コロナ後の職場で、また広く社会においてニュー・ノーマル(新たな常態)を生み出していくべきである。
それを実現するための、いくつかの提言を挙げよう。