既存のブランドにとってさらに大きな脅威は、コロナ危機の間に、消費者がさまざまな商品を試してみたいという気持ちが高まっていることだ。消費者はブランドや企業に以前より高い基準を求め、より社会に貢献していると思う企業を好むようになった。
この変化に対応するためには、ユニリーバやプロクター・アンド・ギャンブルのように数百のブランドを擁する企業は、方向転換をせざるを得ない。もはやブランドロイヤルティは当たり前のものではなく、多くの場合、ブランドのリポジショニングが必要になりそうだ。
ただし、パンデミックの影響で、消費者は安全、経験、快適さに対する関心が高まっているため、ブランドのパーパスやメッセージングを完全に変えるのではなく、水平方向に微調整する必要があるだろう。
すべての転換が、業績につながるわけではない。こうした水平方向の動きを成功させるためには、3つの条件がある。
第1に、リモートワークやサプライチェーンの短縮、ソーシャルディスタンス(社会的距離)、消費者の内省的傾向、技術のさらなる活用など、パンデミックによって生まれたか、あるいは強化された長期的な傾向の、少なくとも1つと一致する方向転換であること。
たとえば、ソーシャルディスタンスが当面のルールであり続けるなら、マッチングアプリのティンダーは、オンラインデートの分野でバンブルやフェイスブック・デーティングと競合することになる。
第2に、会社の既存の能力を横方向に拡張して、企業の戦略的な意図を弱体化させるのではなく強化するような転換であること。
旅行業界の突然の崩壊に直面したエアビーアンドビーは、民泊のホストを経済的に支援して、潜在的なゲストと結びつけるために迅速に動いた。現在、ホストは料理や瞑想、アートセラピー、手品、作曲、バーチャルツアーなど、さまざまなアクティビティのオンラインイベントを提供しており、ユーザーは手頃な料金で利用できる。
この転換は、ホストとゲストのマッチングを促進する従来のビジネスモデルから、ライフスタイル全般を提供するプラットフォームに移行するという、エアビーアンドビーの進化的なアプローチをさらに一歩、前進させた。将来的には、オンライン体験が、旅行者が新しい目的地や現地のアクティビティを見つけ、ホストがよりよいサービスを提供できるように、手助けすることもできるだろう。
エアビーアンドビーは、次の休暇の計画を立てるだけでなく、1年を通して国際的な考え方を身につけ、離れた場所から異文化を学び、世界の多様性を日常的に楽しむプラットフォームになるかもしれない。
第3に、消費者の意識の中でブランドの価値を維持・向上させて、持続可能な収益性への道筋をつけるような転換であること。
パンデミックが引き起こした経済危機は、必ずしも業界全体や企業の終焉を告げるわけではない。より短いバリューチェーン、リモートワーク、ソーシャルディスタンス、消費者の内省、技術のさらなる活用などが特徴となる新しい現実に向かって、方向転換に失敗したビジネスモデルが排除されるということだ。
HBR.org原文:How Businesses Have Successfully Pivoted During the Pandemic, July 07, 2020.
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