新型コロナウイルス感染症によって、企業はさまざまな変化を迫られてきたが、前述の疑問を解明するうえでは、パンデミック前に行われた調査が役に立つ。2019年9月に発表されたエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)による調査は、オーストラリアおよび中国、香港、ニュージーランド、シンガポール、英国、米国、インドのエグゼクティブ750人を対象としたものだ。
この研究から、企業トップが直面している課題が明らかになった。すなわち、従業員のスキル、経営幹部による認識の欠如、リモートワークの機会の欠如、組織文化、複雑性の問題、コストとリスク、不十分なインフラなどである。
加えて、より長い伝統を持つ企業の場合には、レガシーシステムを抱えていること、そしてイノベーションや問題解決に対して旧来型のアプローチが存在してことに足を引っ張られるケースが少なくない。
もちろん、コストや複雑性、スキルもすべて障壁であることは間違いない。だが、テクノロジーを支える適切な組織文化がなければ、とりわけパンデミックの時代には、いくら研修や特定のツールに投資しても、実を結ばずに終わりかねない。
したがって、今後数カ月間に新たなテクノロジーの導入を検討している会社が特に注視すべき領域は、組織文化だと我々は見ている。
こうした問題に取り組んできた経験に基づき、我々は次の5つの方法がビジネスリーダーにとって重要なカギになると考えている。より的確かつ効果的なテクノロジーの導入を促す組織文化を創造する助けとなるはずだ。
●テクノロジーの利用にインセンティブを与える
望ましい組織文化の構築には、業界ごとに異なるアプローチが必要だが、有効性の実証された戦略がある。テクノロジーの利用にインセンティブを付与することである。
金銭的利益、あるいは困難な問題に対する新たな解決法は、適切に実行されれば行動の変化を促す。定期的に従業員の業績を評価するのと同じように、評価の範囲を広げてテクノロジーを使いこなすスコアを加えるのだ。
たとえば、いくつかの国々ではすでに、企業や教員が従業員や生徒を評価するために、カフート(Kahoot!)のようなゲームの要素を取り入れたオンラインプラットフォームを活用している。
ほとんどの人々は、私生活でテクノロジーを率先して受け入れている。個人資産から自分の健康状態に至るまで、そしてその間にあるものすべてを、スマートフォンやスマートウォッチ、あるいはアプリを駆使して管理している。それらを使うことで、日々の暮らしはよりシンプルに、より便利に、より効率的になる。
これらのテクノロジーの多くは、必要な統計データを生成するだけでなく、実際に時間を効率的に使い、日常生活のパターンを分析してくれる。これはすなわち、職場、あるいは公共部門で働いている場合には政府からの適切なインセンティブがあれば、人々は行動を変容させることを示唆している。