●期待値をリセットし、従来の慣行を見直す

 リモートワークへの移行は、建設的なフィードバックのやりとりをめぐるチームの期待値をリセットする絶好の機会だ。あなたがチームリーダーなら、「あなたが私の立場だったら、何を変えたいか3つ挙げてほしい」と尋ねてみよう。フィードバックに寛容な姿勢を示すことで、メンバーもフィードバックを受け入れやすくなる。

 今回の危機は、従来の慣行を見直し、改善することをチームに促すよいきっかけにもなる。オンラインでの仕事は、調整やリーダーの失敗に対する寛容さが薄れるため、周囲を巻き込んで迅速に軌道修正を行う、またとない機会である。

 まずはミーティングで、あなたが把握していることを伝え、把握していないことが多くあると示し、メンバーには知識だけでなく、懸念や疑問も共有してもらうことから始めるとよい。物事を俎上に載せることで、より多くの問題に対処することができる。

 たとえば、私たちが助言したあるチームリーダーは、リモートワークを始めてわずか数週間で、2人の従業員の間にあからさまな対立が生じたことを打ち明けてくれた。実は、その対立は何カ月も続いていたという。

 リーダーが状況を整理し始めると、問題の根源は一方の従業員のコミュニケーションの仕方が素っ気なく直接的で、もう一方の従業員はそれを不快に感じていたことがわかった。リモートワークに移行して、互いのメールのトーンが不明瞭なことと、それまでの緊張関係が相まって、問題が急速にエスカレートして大きな対立に発展していた。

 この出来事から学び、チームのやり方を改めようと、チームリーダーはチームの全体会議をファシリテートし、オンライン環境下でどのようなコミュニケーションが最善かブレインストーミングを行った。

 そこで、チームが導入した新しい方法の1つが「メール2通のルール」だ。同僚にメールを2通送っても問題の解決や合意に至らない場合は、その同僚と電話あるいはテレビ会議で話し合うというものだ。

 このルールを導入してからはメンバー間の誤解が減り、複雑な業務上の問題をより迅速に解決できるようになった。