●自分の権利を知る

 まず重要なのは「自分の権利を知り」、有給休暇や育児・介護に関する選択肢を理解することだとトンプソンは語る。勤務先の就業規則を調べて、別の就労形態が選択肢にあるかどうかを確認しよう。

 パンデミックが起こるずっと以前から、フレックスタイム制を導入する組織は増えている。多くの州でも、公務員はフレックスタイム制を利用できるようになっている。

 自分の置かれた状況が、連邦法の「ファミリー・ファースト新型コロナウイルス対策法(FFCRA)」の適用対象に該当するかも調べてみよう。この法令は、一部の雇用者に対して、自主隔離をしなければならない人や、保育施設や学校が閉鎖して自宅にいる子どもを世話する必要がある従業員に、有給休暇を与えることを義務付けている。

 勤務先に人事部があるなら、その担当者と話して、どんな選択肢や便宜があるかを知ることをワシントンは勧める。「知は力なり」とワシントンは言う。

 ●自分の個人的な事情を率直に話す

 次に、上司と1対1のミーティングを行い、その席上で「自分の限界を正直に、包み隠さず話すとよい」と、トンプソンは助言する。会社やチームに対するみずからのコミットメントをはっきりと示しつつ、職場外での責任もあることを説明するのだ。

 実際のところ、マネジャーに同情心が欠けているのは、彼らに悪意があるからではなく、深く考えていなかっただけということもある。

 たとえば、上司に子どもがいない場合、パンデミックの最中のオンライン授業に関する「表面的あるいはわかりやすい」タスクは認識していても、両親が子どもたちの技術サポート役であり、数学の先生であり、作文のコーチであり、料理人でもあることには気づいていない可能性がある、とトンプソンは語る。上司とのミーティングは生易しいものではないだろう。

 話し合いが苦痛だからといって避けてはいけない。「マネジャーたちを不安にさせるのは沈黙だ」と、トンプソンは警告する。

 また、「自分はなんてかわいそうなんだ」と自己憐憫の押し売りをするわけではないことも覚えておこうと、ワシントンは付け加える。「弁解をしているのではなく、あなたは事実を述べている。自信とコミットメントを表す口調で話そう」

 ●共感を伝える

 さらに、思いやりの気持ちを持とう。上司も大変な状況に置かれている。特に、いまであればなおさらである。

 多くのマネジャーがプレッシャーにさらされている。「マネジャーたちはストレスや不安を感じつつ、少ないリソースで多くのことをやろうと奮闘している」と、ワシントンは語る。上司の立場から状況を見てみよう。

 トンプソンによると、上司への共感は「純粋かつ戦略的」でなければならない。マネジャーに悩みの種を尋ねてみるとよい。何が不安なのかを見出すのだ。誠意を持って、一人の人間として、上司を気にかけていることを示そう。

 それと同時に、戦術的であるべきだ。「上司の目的や達成しなければならない数字」について質問することをトンプソンは勧める。そうすることで「上司の懸念事項に関する重要な情報を得られるから」であり、あなたが仕事の優先順位を決める時、それがわかると焦点を絞りやすくなるからだ。

 ●計画を立てる。不測の事態に備えた計画も立てておく

 自分の上司が「何を最も気にかけているかを理解」できたら、上司の目標達成を後押しするように、あなたの仕事の計画を組み立てるとよいと、トンプソンは助言する。結果に照準を合わせることが重要だ。

 育児や介護をしている人の場合、予定通り事が運ばないことが多い。そのため計画を立てると同時に、不測の事態に備えた対応策もいくつか立てることが重要だ。

 上司が抱いている「この部下はしっかり仕事をしてくれないのではないかという不安」を払拭すべく、「仕事を期限内に終わらせる手はずを整えている」ことを示して対応しよう。あなたと話した後で「任せておけば安心だ」とマネジャーが考えられるようにしたい。

 あなたが期待通りに仕事をこなしてきた過去の実績について、マネジャーに思い出してもらうことをためらってはいけない、とワシントンは付け足す。「将来の業績を予想するうえで最も強力な指標は、過去の業績」だからだ。「最も重要なのは仕事をする方法ではなく、仕事を完了させることだ」と、マネジャーが気づくことに期待したい。

 ●頻繁にコミュニケーションを取る

 上司には常に最新情報を伝えるようにと、ワシントンは助言する。オフィスに出勤していない場合は「1日1回報告するための時間を設ける」か、最低でも数日に1回はメールで近況報告することを考えたい。「その目的は、仕事が進んでいることを知らせ、マネジャーを安心させることだ」とワシントンは言う。

 このコミュニケーションを取るために、実際に顔を合わせる時間を増やす必要はない。電話会議で状況報告する代わりに、チーム宛てにメールを書いて「今週の目標を掲げ、自分が取り組んでいることは何かを知らせる」。

 あるいはズームによるチームミーティングの代わりに、「スラックで協働する」ように同僚に勧めるとよい。スラックを使えば「子どもが横にいてもメッセージを次々に送る」ことが可能だからだ。