実践からのアドバイス

 ケーススタディ(1)自分の権利について人事部に尋ね、上司との関係が改善しない場合は見切りをつける

 ジェニファー・ウォルデンは、造園家向けのオンライン企業であるウィキローンのオペレーションディレクターだ。現在の雇用主兼マネジャーは、彼女の家庭でのコミットメントに関して融通を利かせて柔軟に応じてくれているが、彼女は常に現在のように運がよかったわけではないという。

 数年前、ゲーム業界で働いていた時の上司――仮にジェリーと呼ぶことにする――は、ジェニファーが母親であり、子どもの一人が健康上の問題を抱えていることに同情的ではなかった。

「本当につらかった」と、ジェニファーは当時を思い出す。「娘が合併症を引き起こした時は、職場での生産性がかなり下がったと思い、罪悪感を抱いたのを覚えています。私は常に娘を心配していました」

 この仕事に就いた直後から、ジェニファーは家庭での責任に関して、包み隠さず率直に話していた。「早い段階から、娘の健康状態が特に悪い日には、在宅勤務してもいいかと上司に尋ねたのを覚えています」と彼女は語る。

 しかし、ジェリーの答えはノーだった。「リモートワークやフレックスタイム制に関する話は、まったく聞いてもらえませんでした」と彼女は振り返る。

 ジェリーは威圧的で、自分の電話やメールにすみやかに対応することを求めた。週末でも同様だ。それに対して、ジェニファーは努力を続けた。2カ月後、ジェニファーは再びジェリーに頼んだ。会社に対する自分のコミットメントについて話し、自分が誠実であること、締切を守っている過去の実績を訴えたのである。

「私は彼の懸念を和らげようとして、できなかった仕事をいかに穴埋めするかを自分から伝え、スケジュールを柔軟に変更し、自宅から定期的にチェックすると話しました」と、彼女は述べる。

 ジェリーはそれでも態度を変えなかった。

 ジェニファーが支援と励ましを求めてチームの同僚たちに接触したところ、多くの人が同じような不満を感じていることがわかった。

 そこで、同僚たちと一緒に人事部に掛け合うことに決めた。「人事部はある程度の助けになりました」とジェニファーは語る。「娘の病状が悪い日に在宅勤務する権利を求めて戦いました。私の上司は過去に認めたことがなかったものの、その組織では在宅勤務が許されていたのです」

 しかし、自分の職場外の生活を受け入れないマネジャーの下で、ストレスを感じながら働くほど価値がある仕事ではないと判断し、結局、ジェニファーは退職した。

 かたや、彼女のウィキローンでの経験はまったく異なる。「ここでは無制限に私用休暇を取得することができます」と述べる。「私の上司は頻繁に娘の様子を尋ねてくれるし、娘の具合が悪くなった時にプロジェクトを終わらせるのに時間がもっと必要かどうかを聞いてくれます」