●境界線を明確に引く

 上司がオンラインであれ直接であれ顔を合わせることにこだわる場合、境界線を設けるのは難しいかもしれない。だが、それでも境界線は重要である。

 誰であれ1日のうちで仕事しない時間が必要だ、とワシントンは語る。「もし夕方6時が夕食時で、子どもたちを寝かしつける時間ならば」、それはそのままにしておいてよい。「そこに境界線を引き、その時間帯は電話に出られないと上司に伝えるべきだ」

 それでもマネジャーが家族との時間に踏み込んでくるようなら、話し合う必要がある。その場合、自分を中心に話を組み立てよう。あなたが勤務日に時間をどう割り振りたいのか、いつどうすればあなたが最も効率よく仕事できるかを話し合うのだ。

 平常心を取り戻して家庭にコミットメントするためには、仕事から離れる時間が必要だ。そのような時間がなければ、仕事には打ち込めない。

 ●自分のネットワークを広げる

 直属の上司が、あなたの家族に対するコミットメントを理解してくれない状態が続く場合、組織内で味方を探す努力をすべきだと、トンプソンは述べる。同僚、他部署で働く仲間、部門外のマネジャーが、そのような味方になってくれるかもしれない。

「仕事とプライベートの両方を持つ存在として、あなたを認めてくれる人たちと良好な関係を築くとよい」とトンプソンは語る。「そうすれば、将来 (上司と)険悪な関係になった時にも、あなたには選択肢がある」

 仕事関係のネットワークを広げてくれるのに加えて、味方は精神的な支えになってくれると、ワシントンは指摘する。仕事と育児・介護に関わる責任とのバランスをどうやって保っているのか、同僚に尋ねてみるとよい。「他の人たちはどのようにして、やりくりしているのかを知ろう」とワシントンは語る。

 ●自分自身を大事にする

 仕事以外の生活を尊重してくれない人の下で働いていると、疲弊するおそれがある。そこで必ず、自分のための時間を取るようにしよう。

 目的を持って「強制的な気分転換」をすることをトンプソンは勧める。読書、料理、ダンス、ランニング、瞑想、あるいは自分が楽しめるかリラックスできる活動のための時間を設けるのだ。トンプソンは「楽しむことを予定に入れるように」と助言する。

 また、運動をふだんしない人には、この困難な時期だからこそ運動する時間を毎日つくることを、トンプソンは提案する。「毎日20~30分の運動がもたらす効能を見くびってはいけない」と、彼女は説明する。上司が気難しく、「自分で何もコントロールできないように感じる」時こそ、運動を通じて、幸福感をもたらす脳内ホルモンのエンドルフィンを増やすことを優先すべきである。

 ●好機を待つ

 最大限の努力を重ねても、状況は改善されないかもしれない。トンプソンはそうした場合、現在の状況下で自分がなれる最高の従業員を目指すことを勧めている。「必ず期待された通りの成果を上げ、攻撃する理由を上司に与えないようにすること」と彼女は述べる。

 また、ワシントンは次のように助言する。「上司が部下の個人的事情にまったく共感を示さないおそれもある。上司からの支援を得られず、自分のニーズが勤務先の組織に受け入れてもらえなければ、その職場環境はあなたのキャリアアップに最適なものではないかもしれない」。この場合は、別の職場に移るべきタイミングがきているのかもしれない。

 ●覚えておくべき原則

【やるべきこと】
・上司に思いやりを示そう。彼らの目標を理解し、その目標を見据えて仕事の優先順位を決めるとよい。
・先を見越して、日々の仕事のやり方に関する計画と、不測の事態に備えた計画をいくつか立てておこう。
・自分の個人的状況を理解してくれる人や、上司との関係が悪化した時に選択肢を与えてくれそうな人たちとの関係を組織内で築こう。

【やってはいけないこと】
・仕事以外のコミットメントについて上司に話そうとしないのは、マイナスとなる。あなたが家庭で果たすべき責任について、率直に打ち明けよう。
・頑なな姿勢はよくない。仕事をする時間と方法について創造力を発揮しよう。
・同情心のない上司の下で働いている時に、自分の心身の健康をなおざりにしてはいけない。趣味やさまざまな活動のための時間をつくろう。