最初の2つのピッチが後より低い評価を受けたのは、どのようなバイアスが原因になっているのか。
審査員が、偏りを調整する「キャリブレーション(calibration)」を行った可能性はある。異なる市場や異なるステージのベンチャー企業、資本ニーズがイベントの参加者らと大きく異なる起業家らと、最近触れる機会があったのかもしれない。もし審査員が次のドロップボックスやスポティファイを期待していたなら、今回の実験に参加したアーリーステージのスタートアップに合わせて調整するのに時間がかかったのかもしれない。
そうだとすれば、この順番のバイアスは筆者らの研究に限ったことではないだろう。結局のところ、創業者とスタートアップの相対的な資質は、技術革新や時事、新たな市場機会に対応して常に進化している。そのため、そうした機会を評価する投資家は、ピッチのように順番が決められたイベントでは、このようなバイアスを経験する可能性が高い。
起業家にとって意味すること
残念ながらピッチの順番を選べることはあまりないが、選べる時はできるだけ1番目を避けるようにしよう。
ピッチを最初にすることは、一般的にスタートアップの創業者に好ましいとされる進取の気性や野心を示すと考え、直感と反するように思う起業家もいるかもしれない。しかしピッチコンテストに関しては、サメの水槽に最初に飛び込んでも報われないのと同じであることが、今回の調査で示されている。
主催者にとって意味すること
不公平なイベントを開催しても、誰も得をしない。テクノロジー業界はすでに、人種差別や性差別、身障者差別など、解決がはるかに困難な問題に起因するバイアスに満ちている。ピッチの順番のバイアスは、もっとシンプルな問題だ。
イベントの主催者は、ピッチの順番をランダムに決定するだけで、有利な順番を得るチャンスを参加者に均等に与え、不公平さを低減することができる。さらに、早い順番のピッチに対するバイアスを抑制するために、審査員が期待値を調整する機会があれば、後から早い順番のピッチの評価を見直すよう指示することも可能だ。
この解決策を検証し、こうした簡単な措置によって順番の影響がどの程度相殺されるかを判断するには、さらなる研究が必要だ。
投資家にとって意味すること
投資家は、投資先を決定するうえで合理的な意思決定をすることを目指している。順番の影響があることを認識し、すべてのピッチが終了した後に最初の評価を見直すことで、意図的にその影響を緩和することができる。
自分の評価が、ピッチの順番のような無意味なものに影響されず、好機を見逃さないようにしよう。
HBR.org原文:In Pitch Contests, Going First Is a Disadvantage, September 01, 2020.
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