ギットラボのアプローチの限界を認識する
しかしながら、こうした非同期のリモートワークの場合、いかにうまく実行されたとしても、従業員同士の交流の機会をあまり設けられない。
これは大きな欠点である。なぜなら、交流は多くの人々にとって喜びとやる気の源泉であるだけではない。コーヒーメーカーの近くやエレベーターホールでのセレンディピティ、つまり偶然の出会いから予期せぬ会話が生まれることで、アイデアや情報が共有され、新たな形で再結合することがあるからだ。
この限界の影響を最小化すべく、ギットラボではタスクとは無関係に交流できる機会を提供している。毎日、社内コミュニケーション用に3つの集まりが用意され、チームメンバーは1つを選び、任意で参加できる。さまざまなタイムゾーンのスタッフが参加できるように、時間をずらして設定されている。
この集まりは8人から10人のグループで成り立っており、ビデオのチャットルームで自分たちが好きなことを自由に話す。会話を切り出すきっかけが必要な場合に備えて、ギットラボが日替わりで最初の質問を提供している。たとえば、「週末に何をした?」とか「これまで旅行した場所で素晴らしかったのはどこ? その理由は?」といった具合だ。
さらに、ギットラボのスラックにも社内コミュニケーション用のグループがある。同じような趣味や好みを持っている社員が参加できる、テーマ別のチャットルーム(たとえば、#猫、#犬、#料理、#メンタルヘルス、#日々の感謝、#ゲーム)や、コーヒーを片手に交流することを目的に見知らぬ者同士が集まる「#見知らぬ者同士のドーナツ愛好会チャンネル」などだ。
当然ながら、ギットラボのマネジャーは、これらのグループが、仕事以外の実り多く豊かな交流に完全に取って代わるとは思っていない。とはいえ、このようなグループは、従業員同士がつながりを持つ一助になる。加えて、多くの従業員が「自粛モード」で働いている時には、士気を維持するのに極めて役立つことが実証されている。
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在宅勤務を効果的にするには、従業員にラップトップとズームのアカウントを与えるだけでは足りない。それ以上のことをする必要がある。
たとえば、リモートワークのよさである柔軟性を最大限に活用すること、つまりどこからでも好きな時間に働けるようにすることである。さらに、リモートワークの限界を補ったり、避けたりできる方法を包括しなくてはならない。
我々がギットラボに注目したのは、同社がリモートワークに長い経験があるからだけでなく、リモートワークに内在する難題を解決するために独自のスタイルを追求しているからである。
ギットラボの核となるプロセス(たとえば、長時間かけてリモートで行われる新入社員のオンボーディング研修)や利点(たとえば、世界中から採用する可能性)は、一時的な措置としてリモートワークを採用している会社の場合、短期間で完全に再現することは難しいかもしれない。
だが、ギットラボが実践しているプロセスの中には、どの会社でも簡単に実行できるものもある。
HBR.org原文:Remote Work Doesn't Have to Mean All-Day Video Calls, September 09, 2020.
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