●横と外のインフルエンサーに頼る

 文化は、人と人の日常的な交流を通してつくられていく。しかし、大組織の文化を独力で変革できるような人はいない。変化を効果的に生み出せるのは、組織の上層部からの指示ではなく、社会的なつながりによってもたらされたポジティブなピアプレッシャーである。

 ベン&ジェリーズで、社員たちが昼寝用の部屋を使うようになったいきさつについて考えてみよう。当初は皆が恥ずかしがって、昼寝用の部屋を使う時は利用者名簿に「ドナルド・ダック」といった偽名を書き込んでいた。そこで利用者名簿を使うのをやめた。もっと簡単な方法で、部屋が使用中であることを伝えられると気づいたからだ。

「ドアが閉まっていたら、部屋が使われていることを意味する」と広報担当者は説明している。部屋を前もって予約することはできなくなったが、ベン&ジェリーズは、誰もが気兼ねなく利用できるようにすることをまず優先すべきだと気づいたのだ。

 もう1つ、例を挙げよう。私が非営利セクターで働いていた時に出会ったギャブ・ワイヤレス(Gabb Wireless)の創業者スティーブン・ダルビーは、勤務時間後もなかなかスマートフォンを手放せずにいた。

 ある日、6歳の息子に鋭い質問をされた。「パパ、一緒にゲームをして遊べる? それともスマホが大切すぎる?」。子どもたちが画面を見て過ごす時間を減らせるように、子ども向けの携帯電話サービスを提供する会社を創業したにもかかわらず、スティーブン自身は「仕事モード」をオフにすることに苦戦していたのだ。

 自分自身とチームに根付いていたこの文化と戦うため、夕食時にはデバイスに触らないといった日々の小さな習慣を築くよう社員に促し、そのような夕飯の様子について職場で話し、健全な境界を設けることこそが規範なのだと全員に伝えた。

 会社はいつだって忙しい。その忙しさが慢性化し、文化と化してしまうのを防ぐことが肝要である。そうでなければ、たとえ表面的にはどれほど生産的に見えたり、ポジティブに見えたりしても、忙しさは害になるのだ。


HBR.org原文:How to Defeat Busy Culture, September 29, 2020.


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