では、未来のIT業界のビジネスモデルは、どのようなものになるだろうか。上述した状況の変化を考えると、次の時代のIT業界で成功するには、従来とは異なる目標を実現することが必要になるだろう。

 シリコンバレー(特にサンドヒルロード)では口にすることがタブーとなっているが、IT業界の新時代は、成長が遅いもののより持続性が高く、収益性は低いものになる可能性が高い。資金調達、規制、世論におけるすべての変化が、現在のようなスケールファーストのビジネスモデルの重要な側面を変え、既存の収益源を破壊すると見られる。

 大手IT企業の経営者としてこの業界で15年働き、ボストン コンサルティング グループのコンサルタントを務め、巨大テクノロジー企業をより共感的・人間中心的な存在にする方法に関する著書を1年半以上かけて執筆した筆者は、この急速に進化する環境において、私たちは大きな変化を迎えようとしていると確信している。従来とは異なるIT企業には、次のような新たな機会が訪れるはずだ。

 ●マイクロターゲティング広告はますます非難され、弱体化する

 プライバシーの侵害、陰謀論の流布、有権者の操作に関する懸念の高まりによって、ツイッター、フェイスブック、グーグルと傘下のユーチューブが使用するマイクロターゲティングのアプローチと距離を置く企業が求められる。

 このビジネスモデルの価値をめぐっては議論が起きており、ヘイトスピーチ、プライバシー侵害、データ侵害などに関するスキャンダルが盛んになっている。ウェブベースの広告プラットフォームは、マイクロターゲティングをごく一部のカテゴリーや広告主に限定する可能性が高く、規制当局やユーザーに受け入れられやすい「フリーミアム」モデルのようなものに移行するだろう。

 ●ギグワーカーの権利拡大と「ゼロ時間」契約の終焉

 ウーバー、リフト、エアビーアンドビー、ドアダッシュのように、消費者向けビジネスを身体的に提供する「破壊者」は、意識の変化や、ユーザーと顧客からの圧力により、フルタイムの労働者に保障を提供することを余儀なくされるだろう。

 最終的には、これらの企業は投資家が想定したFANGAM(フェイスブック、アップル、ネットフリックス、グーグル、アマゾン、マイクロソフト)型の巨大テクノロジー企業よりも規模が小さく、収益性も低くなり、巨額のリターンを求めるベンチャーキャピタルにとって魅力的なモデルではなくなると思われる。

 しかし、投資家の底なしの資金から解放されたこの分野の新興企業は、創業時から真に収益性が高く、持続可能な企業になるチャンスがある。