第1に、フェイスブック、アマゾン・ドットコム、アルファベット(グーグル)、アップル、マイクロソフトという、巨大テクノロジー企業によるほぼ完全な支配が抑圧的になっていることだ。これらの企業は優秀な人材を囲い込むだけでなく、その規模を拡大して隣接市場にも進出し、一部の優良な新興IT企業を除く、あらゆる企業の存続を脅かしている。
巨大テクノロジー企業は、競合となる可能性をはらむ企業が一定規模に成長する前に、潰すか、買収することを目指す。そのため、彼らが戦略的に重要だと考える市場(増え続けている)で競争する小規模企業は、莫大な資金力の標的となるリスクがある。こうした覇権がイノベーションに影響を与え、資本配分を集中化させる。
第2に、ウーバーやリフト、そしてキャスパー、スマイルダイレクトクラブ、スーパー・リーグ・ゲーミング、イェイヨなど中小企業のIPO後のパフォーマンスの低さや、ウィーワークとその筆頭株主であるソフトバンクの混乱なども引き金となり、個人投資家と機関投資家の双方がアプローチを変えつつある。投資家たちが急成長や「ブリッツスケール(電撃的拡大)」だけでなく、収益性への明確な道筋が重要だと考えている事実を反映するように、追加投資の要件を厳しくしているのだ。
パンデミックが一部の産業に特に大きな打撃を与えていることと相まって、新興企業の中には成功が疑わしいビジネスモデルが露呈したところもある。パンデミックが原因であれ、危機以前の問題であれ、資金調達が容易でないことで投資家が撤退したり、廃業を余儀なくされたりした新興企業も少なくない。
第3に、規制当局、メディア、そして一般の人々が、テクノロジーの弊害や、消費者を裏切ってきたさまざまな手法を理解するようになっている。大規模なプライバシー侵害、有権者の操作、偽情報、不安定な労働条件、生命を脅かす製品、一部の起業家による常軌を逸した行動などは、5年前であればたいていが容認されていた。それは主に世間の無知と、「素早く動き、破壊せよ」「世界をよりよい場所にする」といったIT業界のスローガンが信じられていたからだ。
今日では、ソーシャルメディアやパーソナライズされた検索結果が私たちを懐疑的にし、意見を硬化させ、また短期賃貸が賃料の上昇を促すなど、IT業界が産んだ有害な副作用や、制限なく影響力を拡大したことの代償がますます明るみになる中、IT業界は批判的な視線にさらされている。
第4に、社会の雰囲気も明らかに変化しており、テクノロジーが社会に与える影響に責任を負うことに対する期待が高まっている。巨大テクノロジー企業の時価総額が中規模の国家経済に匹敵するレベルに達したことで、期待と道徳的義務も拡大している。
フェイスブックの時価総額は、わずか5年前は2400億ドルだったのが、いまや7000億ドルを超えた。アップル、アマゾン、マイクロソフト、アルファベットは1兆ドルを超える。米国で最も影響力のある経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルでさえ、「企業責任における現代の基準」を主張した企業の目的に関する2019年の声明を通じて、「良識ある資本主義」を推奨している。
これらの傾向はすべて、巨大テクノロジー企業が近い将来、報いを受けることを示唆している。ピュー・リサーチ・センターによると9月の時点で、フェイスブック、ツイッター、グーグルなどIT大手のプラットフォームが2020年の大統領選で悪用されるのを防ぐ能力について、米国人の73%があまり確信を持てない、あるいはまったく確信を持てないと答えた。別の調査では、回答者の85%が巨大テクノロジー企業の影響力が強すぎると感じていることがわかった。
一方、米国と欧州では、IT企業がこれまでのように租税回避に精を出すのではなく、適正に納税することを期待する声が高まっている。税の透明性と公平性を求める英国の非営利団体フェア・タックス・マークの研究者らは、2010年から2019年の間にフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、アップル、マイクロソフトが実際に支払った納税額と期待される納税額との差は、1553億ドルに達することを明らかにした。
こうした背景から、過去数十年に典型的なIT企業が採用してきた手法は、20年後の成功を目指す企業はもちろん、生き残りを目指す企業にとって、ビジネス的にも社会的にももはや通用しないことは明らかだ。
投資家からの資金調達のしやすさに加え、略奪的な価格設定(たとえば、ウーバーの配車やドアダッシュの配達は、価格を人為的に低く維持して競合他社を妨害するために、莫大な投資資金が投じられている)、オンデマンド・エコノミーにおけるインディペンデント・コントラクター(独立業務請負人)の搾取、ソーシャルメディア・プラットフォームの利用時間を増やすために怒りを煽るアルゴリズム、プライバシーを破壊するマイクロターゲティングを奨励する広告の最適化などを促す、とてつもない収益成長率を実現することに対する期待は存続が危うく、持続不可能である。