●D2Cやオンライン製品のサブスクリプションモデルでは、勝ち組と多くの負け組が生まれる
この10年、ダラー・シェイブ・クラブ、ハリーズ、オネスト・カンパニー、キャスパーなど、物理的な商品をオンラインで販売するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ビジネスがもてはやされている。
理論的には、中間業者(つまり小売業者)を排除することで、D2C企業はレガシーブランドよりも低価格で製品を販売することができ、製品の強化が可能になる。だが、D2Cは期待されたほどのものではないことが明らかになっている。このモデル自体が機能しないのではなく、ほとんどのD2Cビジネスは、いかなる領域の専門性も構築していないのだ。
製品が必ずしも優れているわけではなく、デジタルマーケティングを習得したわけでもなく、取得原価とスケール不足のためにユニットエコノミクスが見かけほど魅力的ではない。また、D2C企業の数が多すぎるため、最大の規模で最良の経営を実践する企業だけが勝ち組となり、多くの企業が負け組となるだろう。
しかし、そうした中から新たなビジネスチャンスが生まれる。消費者の需要はオンラインにシフトし続けるので、あらゆるコンシューマーブランドがD2Cのプレーヤーになることを支援する、新世代のプラットフォームビジネスが誕生するはずだ。
そうしたプラットフォームビジネス(ストライプやショピファイなど)は、みずから生み出したアグリゲーションから利益を得る。デジタルマーケティングの勝者になるには、小規模なD2Cブランドを1つ持っているだけでは不可能であり、100のブランドを持っている必要があるということだ。こうした傾向は、レガシーブランドがいち早くD2Cに移行する後押しにもなるだろう。
●「良識ある資本主義」を重視する企業や、共感的なIT企業が優位に立つ
消費者があらゆるブランドにより高い倫理基準を求める時代には、すべてのIT大手が多大な責任を持ち影響力を行使することが、ますます期待されるようになる。そして、規制当局、ユーザー、取締役会と投資家、自社の従業員(最近ますます高まっている)からも、適切なトレードオフを実現する責任を問われるようになるだろう。
企業は次のような決断を迫られる。
(1)プラットフォーム上の怒りや右派ポピュリズムによる高いユーザーエンゲージメントを通じて利益を得るか、厳格な基準を設けて偽情報やいじめ、ヘイトのないユニバーサルなコミュニケーションプラットフォームを提供するか(ツイッター、フェイスブック、ユーチューブ)。
(2)商品などの審査をおざなりにして低価格を実現するか、偽物や危険性を伴う商品・場所を厳しく取り締まり、取り扱う製品・サービスを制限するか(アマゾン、エアビーアンドビー)。
(3)監視、プロファイリング、政府の行き過ぎた行為を許すことなく、民主的な政府による合法的な安全保障活動をどう支援するか(グーグル、マイクロソフト、アップル)。
例を挙げればきりがないが、最後に、すべてのスタートアップの創業者やレガシー企業のCEOが社会起業家精神を持ち、利益や成長以外も重んじる「Bコーポレーション」になることも提案したい。価値観や共感を重視した経営をする企業は収益性も高い。卓越して良識ある企業は1996~2011年の間に、S&P500指数を10.5倍上回ったという調査もある。