ラクダは3つの戦略で生き残り、繁栄する。すなわち、バランスよく成長をすること、長期的な見解を持つこと、ビジネスモデルに多様性を組み入れることだ。
バーン(資金燃焼)せずにバランスをとる
ラクダのようなスタートアップは、規模を拡大するために急成長を遂げて、効率よりもスピードを優先する「ブリッツスケーリング」には関心がない。成長への野心はいずれのシリコンバレー企業にも劣らないが、バランスのよい成長経路を選択する。
このバランスの取れたアプローチを取るうえで、重要な要素が3つある。
●最初から適正価格を設定する
第1に、新興市場の起業家は、顧客数を永続的に増加させるためにプロダクトを無料で提供したり割引で販売したりして、「バーンレート(資金燃焼率)」を高くする手法をとらない。その代わりに、初めからプロダクトの価値にふさわしい対価を顧客に求める。
ラクダは、価格が成長の障害にならないことを理解している。価格ではなく、プロダクトの特徴が市場での位置と質を反映するのだ。
●ライフサイクルを通じてコスト管理する
ラクダは同時に、より長期の成長曲線に沿うように、自社のライフサイクルを通じてコストを管理する。
オンライン教育と学習支援を提供するクイズレット(Quizlet)のCEOであるマット・グロツバックは、人に関する2つのコストの観点からこの戦略を理解している。すなわち、ユーザーを獲得するためのコストと、人材への投資という重要なコストである。
「景気の浮き沈みを生き残れるような企業にしたい」と、グロツバックは説明する。「私にとってのレジリエンス(再起力)には2つの要素がある。1つ目はユーザー獲得に関するユニットエコノミクス、2つ目は成長を促進するうえで人材に投資する際、収益カーブにどのくらい先行してそれを行うか、である。我々は計算し尽くして決断し、投資に期待をかける。決断が正しければ大きく成長するが、間違っていても大損にはならない」
●成長軌道を変える
スタートアップは企業のライフサイクルを通して支出を管理し、長期にわたる厳しい状況を切り抜けられるように備える。シリコンバレーの典型的なスタートアップの現金残高の推移を見ると、深い「死の谷」のようなグラフを描く。収益を上げる前に大赤字を出すことを、グラフの線が反映しているだ。
一方、フロンティアのスタートアップが描くグラフは違う。ラクダは当然ながら成長を避けたり、ベンチャーキャピタルからの資金調達を拒否したりすることはしない。しかし、その拡大のやり方と、それに伴う出費のスピードはそれほど極端ではない。
グラブハブのように、目の前の商機を掴み取るうえで必要な時だけ投資を加速する(多くの場合はベンチャーキャピタルから資金調達する)ことを選び、抑制の効いた急成長をする場合もある。
彼らは急成長を遂げたあとでも、それが必要ならば、サステナビリティ(たいていの場合は収益性も)を再び取り戻せる範囲にいることが多い。ここでの違いは、ラクダが自社の成長軌道を適応させたり、持続可能なペースに戻ったりする選択肢を保持していることである。